神と契約を持つアブラハムの子孫(イスラエル)を四百年間、奴隷としたエジプトに、神は預言者エゼキエルを通して宣告されました。
「神である主はこう仰せられる。エジプトのパロ王(ファラオ)よ。わたしはあなたに立ち向かう。
あなたは野原に倒れ、集められず、葬られることもない。わたしがあなたを地の獣と空の鳥の餌食とするとき、エジプトの住民はみな、わたしが主であることを知ろう。
彼らが、イスラエルの家に対して、葦の家にすぎなかったからだ。彼らがあなたの手をつかむと、あなたは折れ、彼らのすべての肩を砕いた。彼らがあなたに寄りかかると、あなたは折れ、彼らの腰を痛めた。
それゆえ、神である主はこう仰せられる。わたしは剣を送ってあなたを攻め、人も獣も、あなたのうちから断ち滅ぼす。
エジプトの地は荒れ果てて廃墟となる。このとき、彼らは、わたしが主であることを知ろう。」(エゼキエル29:3-9)
ヤコブの時代、エジプトとカナン全域に七年間の飢饉がありました。その期間に、エジプトの大臣となっていた息子ヨセフの取り計らいにより、ヤコブとその息子たち、ヤコブ一族はエジプトの地に移住して、ヨセフに養われました。
飢饉にうめく世の中で、アブラハムの契約を相続する子孫ヤコブ一族は、エジプトの地で養われて生き延びることができました。
父ヤコブの寵愛を受けるヨセフを妬み、ヨセフを憎む兄たちにエジプトの奴隷として売られてしまったヨセフでしたが、エジプト人の奴隷となったヨセフが神によってエジプトの大臣となりました。これらのことは、神の計らいでした。
神がヨセフに七年間の豊作と七年間の飢饉を知らせられたので、エジプトには、豊作の七年間で蓄えた食糧がありました。それで、ヤコブ一族もエジプトで養われたのです。また、エジプトの地は、神のしもべヨセフゆえに大いに祝福され、財宝が集められ、建築においても目を見張るものがあり、すべての国々に抜きんでていました。
ヤコブが息絶え、ヤコブの息子たちも死にました。エジプトの大臣であったヨセフも死に、ヤコブの子孫ユダヤ民族(イスラエル)はエジプトの寄留者でした。エジプトにヨセフのことを知らない世代の王が立つと、寄留者のユダヤ民族は、エジプトの奴隷として酷使されたのです。それは、四百年の間続きました。
飢饉の中でイスラエルを養ったエジプトは、イスラエルを奴隷として酷使する国民となりました。それで、イスラエルの神はエジプトを怒り、エジプトからイスラエルを救い出した後に、エジプトを荒れ果てた廃墟とすると言われたのです。
世界で最も栄えた古代エジプト王朝の地を、荒れ果てた国々の間で荒れ果てさせ、廃墟とする、と宣告されました。四十年の間、神は、エジプト人を諸国の民の中に散らし、国々に追い散らし、四十年の終わりになって、エジプトの捕らわれ人を散らされていた国々の民の中から集め、彼らの出身地パテロスの地に帰らせることを宣告されました。
「エジプト人はそこ(パテロス)で、取るに足りない王国となり、どの王国にも劣り、二度と諸国の民の上に抜きんでることはない。彼らが諸国の民を支配しないように、わたしは彼らを小さくする。」(エゼキエル29:14,15)
どうして、あのような大国がこのようになってしまったのか、というのには、神の御意思があるのです。神が世界を動かしておられるのです。
そして、主は仰せられました。神は、すべての国々の上に立つ主です。
「バビロンの王ネブカデレザルはツロ攻撃に自分の軍隊を大いに働かせたのに、彼にも彼の軍隊にも、ツロ攻撃に働いた報いは何もなかった。それゆえ、わたしはバビロンの王ネブカデレザルにエジプトの地を与えよう。
彼はその富を取り上げ、物を分捕り、獲物をかすめ奪う。それが彼の軍隊への報いとなる。彼が働いた報酬として、わたしは彼にエジプトの地を与える。彼らがわたしのために働いたからだ。―主の御告げ。―
その日、わたしはイスラエルの家のために、一つの角を生えさせ、彼らの間であなたに口を開かせる。このとき彼らは、わたしが主であることを知ろう。」(エゼキエル29:18-21)
主権は、主にあります。主とはだれでしょう。万軍の主、イスラエルの神です。神である主は、ほかの悪者に力を与えて神を怒らせた悪い国を攻められます。
なんとバビロンにエジプトの地を与えたのが神であり、また、権力を持ってイスラエルの家をバビロンに引いて行くバビロンの王を立てたのも神なのです。
神がアブラハムにほかの民族が住んでいるカナンの地を与えると約束されたのは、世界は創造主である神のものだからだったのですね。神が良いと思われるものに、国や国土までも与える権威を持つ、主権者なのですね。この主権者が定められたことは、だれにも止められません。
バビロンに捕囚されることを恐れるイスラエルの民に、「バビロンの王に仕えることはない。」と言って、偽りの平和を預言する預言者や占い師や夢見る者や卜者や呪術者が多く出ました。
その状況で、主は、預言者エレミヤにことばを与えられました。
偽りの預言を聞く者たちに対しては、「バビロンの王ネブカデレザルに仕えず、またバビロンの王のくびきに首を差し出さない民や王国があれば、わたしはその民を剣と、飢饉と、疫病で罰し、―主の御告げ。―彼らを彼(バビロンの王)の手で皆殺しにする。あなたがたは、バビロンの王に仕えることはない、と言っているあなたがたの預言者、占い師、夢見る者、卜者、呪術者に聞くな。彼らは、あなたがたに偽りを預言しているからだ。それで、あなたがたは、あなたがたの土地から遠くに移され、わたしはあなたがたを追い散らして、あなたがたが滅びるようにする。」(エレミヤ27:8-10)と預言しました。
しかし、バビロンの王のくびきに首を差し出して彼に仕える民には、「バビロンの王のくびきに首を差し出して彼に仕える民を、わたしはその土地にいこわせる。―主の御告げ。―こうして、その土地を耕し、その中に住む。」(エレミヤ27:11)と預言しました。
エレミヤは、ユダの王ゼデキヤにも語って言いました。
「あなたがたはバビロンの王のくびきに首を差し出し、彼とその民に仕えて生きよ。どうして、あなたとあなたの民は、バビロンの王に仕えない国について主が語られたように、剣と飢饉と疫病で死んでよかろうか。
『バビロンの王に仕えることはない。』とあなたがたに語る預言者たちのことばに聞くな。彼らはあなたがたに偽りを預言しているからだ。」(エレミヤ27:12-14)
「あなたがたに預言しているあなたがたの預言者のことばを聞いてはならない。彼らはあなたがたに、偽りを預言しているからだ。
彼らに聞くな。バビロンの王に仕えて生きよ。どうして、この町が廃墟となってよかろうか。」(エレミヤ27:17)
神は、エジプトもイスラエルもその他の国々もバビロンの王の手に渡されたのです。神を知らないほかの国々は、イスラエルの神の預言者のことばを憎み、イスラエルの民にもバビロンの王に首を差し出してはならないと言って、神の預言者のことばに従わないようにそそのかしました。イスラエルの神はイスラエルの民に、他の国々のように、バビロンに立ち向かってはならない、と忠告されました。これは、イスラエルを幸せにするための計画であって、神に立ち返り、神の祝福を受ける者とするためでした。
神は、バビロンの王のもとで神への背きを悔い改めて、まことの神に立ち返らせるために、人知を超えた手段も取られます。まことのいのちを得させるための神の御配慮です。
世界情勢は、神の御手の中にあるのです。
聖書のことばは成就します。地に落ちるものは一つもありません。神の預言はことごとく成就するのです。
世界と被造物は、神のことばのうちにあるのです。