ふしぎないのち

神が働く不思議な体験

創世記二十七章 神のことばは実現する

 

 イサクは年を取り、視力が衰えてよく見えなくなった時、長男のエサウを呼び寄せて言いました。

 「おまえ(エサウ)の道具の矢筒と弓を取って、野に出て行き、私(父イサク)のために獲物をしとめて来てくれないか。

 そして私の好きなおいしい料理を作り、ここに持って来て私に食べさせておくれ。私が死ぬ前に、私自身がおまえを祝福できるために。」(創世記27:2-4)

 

 イサクが長男エサウに与えようとしている祝福は、イサクが父アブラハムから受け継いだ祝福です。

 大いなる国民とすること、そして、全地における「祝福」となることです。

 イサクの子孫からキリストが生まれることを、神は定めておられました。救い主を生む者としての祝福を、イサクは長男のエサウに与えたかったのです。

 

 アブラハムの祝福には、特別な油注ぎがあります。神が、神の民としてしるしをつけられるからです。神は誓われました。

 「あなたを祝福する者をわたし(主)は祝福し、あなたを呪う者をわたし(主)は呪う。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」(創世記12:3)

 

 この特別な守りを、イサクは、長男のエサウに受け継がせたかったのです。

 父イサクは、双子の兄弟の弟ヤコブよりも、兄のエサウを愛していました。それは、エサウが猟師で、エサウの猟の獲物を好んでいたからでした。

 

 しかし、母リベカは、天幕に住む穏やかな弟のヤコブを愛していました。

 また、リベカには、神のことばがありました。双子が胎内にいるとき、主はリベカに仰せられました。

 「二つの国があなたに胎内にあり、二つの国民があなたから分かれ出る。

 一つの国民は他の国民よりも強く、兄が弟に仕える。」(創世記25:23)

 

 神は、リベカに、リベカの胎内には双子の男の子がおり、その二人からそれぞれ国が起こること、そして、弟の国のほうが兄の国よりも強く、兄が弟に仕える、と仰せられたのです。

 母リベカは、生まれる前から、相続者は、兄ではなく、弟であることを知らされていました。しかし、イサクは知りません。

 

 イサクは、長男を愛しました。イサクは何の疑いもなく、長子が跡取りであって、カナンの土地も、アブラハムの祝福も、長男のエサウのものだと思っていたことでしょう。

 しかし、エサウは、長子の権利を弟のヤコブに売ってしまったのです。それゆえ、カナンの土地の相続権は、弟ヤコブのものとなっていました。

 弟のヤコブは、すでにカナンの土地を相続しているのだから、アブラハムの祝福は是非とも兄のエサウに相続させたいと願ったことでしょう。

 

 イサクは、神の御計画を知らされていなかったようです。

 神は、土地の相続権も、アブラハムの祝福も弟のヤコブにお与えになって、ヤコブの子孫から世界を救うキリスト(神の子羊)を生むと定めておられたのです。

 神は御存じでした。兄のエサウの魂の値打ちを。兄のエサウは一杯の食物と引き替えに自分のものであった長子の権利を売ってしまうような俗悪な魂だったのです。

 

 神の御計画を知る母リベカは、弟のヤコブに、アブラハムの祝福を受け継がせたいと願いました。

 リベカは、イサクが長男のエサウに話しているのを聞いていました。それでエサウが獲物をしとめるために野に出かけたとき、リベカはそのことを弟のヤコブに告げて言いました。

 

 「わが子よ。私(母リベカ)があなた(ヤコブ)に命じることを、よく聞きなさい。

 さあ、(家畜の)群れのところへ行って、そこから最上の子やぎ二頭を私のところへ取っておいで。私はそれで父上のお好きなおいしい料理を作りましょう。

 あなたが(それを)父上のところに持って行けば、召し上がって、死なれる前にあなた(弟のヤコブ)を祝福してくださるでしょう。」(創世記27:8-10)

 

 ヤコブは、父を騙すことを恐れました。エサウは毛深い人です。しかし、ヤコブの肌はなめらかです。ヤコブに触れるならば、すぐさま弟であることがわかってしまいます。

 「もしや、父上が私にさわるなら、私にからかわれたと思われるでしょう。私(ヤコブ)は祝福どころか、呪いをこの身に招くことになるでしょう。」(創世記27:12)

 

 母リベカはヤコブに言いました。

 「わが子よ。あなたの呪いは私が受けます。ただ私の言うことをよく聞いて、行って取って来なさい。」(創世記27:13)

 

 ヤコブが取って来ると、リベカは料理をこしらえて、兄エサウの晴れ着をヤコブに着せてやり、子やぎの毛皮を、ヤコブの手と首のなめらかなところにかぶせてやりました。

 そうして、母リベカの作った料理とパンをヤコブの手に渡すと、ヤコブは父のところに行きました。

 

 目が見えなくなっているイサクは言いました。

 「声はヤコブの声だが、手はエサウの手だ。」(創世記27:22)

 

 子やぎの毛皮がかぶせられたヤコブの手が兄エサウのように毛深かったので、イサクには見分けがつきませんでした。

 イサクはエサウだと確認し、エサウを祝福しようとしましたが、もう一度尋ねました。「本当におまえは、わが子エサウだね。」

 すると弟のヤコブは答えました。「私です。」(創世記27:24)

 

 イサクは、弟ヤコブが持って来た料理を食べ、ぶどう酒を飲んだ後で、ヤコブが着ている兄エサウの晴れ着のかおりをかぎ、祝福して言いました。

 「国々の民はおまえに仕え、国民はおまえを伏し拝み、おまえは兄弟たちの主となり、おまえの母の子らがおまえを伏し拝むように。

 おまえを祝福する者は祝福されるように。」(創世記27:29)

 

 イサクは、神の御計画を知らないで、神が選んでおられる弟のヤコブを祝福したのです。

 父イサクの心は、兄のエサウにありました。イサクは、弟のヤコブをエサウだと思って祝福したのでした。父イサクは、死ぬ前に、祝福を相続させることができてほっとしたでしょう。

 

 イサクが祝福し終わり、ヤコブが父イサクの前から出て行くか行かないうちに、兄のエサウが猟からかえって来ました。

 イサクのもとに、兄のエサウが料理を持ってやって来ました。

 ほっとしたのも、束の間。イサクは激しく身震いして言いました。

 「いったい、あれはだれだったのか。獲物をしとめて、私のところに持って来たのは。おまえ(長男エサウ)が来る前に、私(父イサク)はみな食べて、彼を祝福してしまった。それゆえ、彼は祝福されよう。」(創世記27:33)

 

 イサクは、神の御計画を成し遂げたのに、神の御計画を悟っていませんでした。

 神の御計画は、アブラハムの相続は弟のヤコブに相続させ、兄のエサウは弟に仕えることでした。

 イサクは、間違っていませんでした。神の御前で正しいことをしたのです。

 しかし、神の御計画を知らないイサクは、弟のヤコブが長男エサウの祝福を横取りしたと思いました。

 

 エサウは言いました。

 「彼(弟)の名がヤコブ(かかと)というのも、このためか。(弟のヤコブは、兄エサウのかかとをつかんで生まれて来たのです)二度までも私(長男)を押しのけてしまって。私の長子の権利を奪い取り、今また、私の祝福を奪い取ってしまった。」

 また言いました。

 「あなた(父イサク)は私(長男のエサウ)のために祝福を残しておられなかったのですか。」(創世記27:36)

 

 イサクは、先に来た息子を祝福するとき、祝福のすべてを与えたのです。

 イサクはエサウに言いました。

 「ああ、私は彼をおまえの主とし、彼のすべての兄弟を、しもべとして彼に与えた。また穀物と新しいぶどう酒で彼を養うようにした。

 それで、わが子よ。おまえのために、私はいったい何ができようか。」(創世記27:37)

 

 エサウだと思って祝福したイサクの中には、ヤコブへの祝福は残されていなかったのです。イサクは、神に大きな過ちを犯すところでした。

 イサクは、神が祝福しようとする者を祝福していなかったからです。しかし、イサクは、妻リベカの計らいにより見誤って弟のヤコブを祝福したことで、結果的に神のことばを実現したのでした。

 

 イサクの激しい身震いは、自分の願い通りにはならず、長男エサウを祝福できなかったことによるのでしょう。

 しかし、イサクが、神の御計画を知ったならば、自分が神の御旨に逆らおうとしていたことを知って身震いしたことでしょう。イサクは、罪を犯さずにすんだのです。

 

 ヤコブが長男として生まれていれば、何事もなかったように思いますが、神には御計画がありました。

 ヤコブが「かかと」と呼ばれることに、理由があります。

 

 神は、エバを騙した蛇に仰せられました。

 「わたし(主)は、おまえ(蛇)と女(人)との間に、また、おまえ(悪魔につく蛇)の子孫と女の子孫(「人の子」として遣わす神のひとり子キリスト)との間に、敵意を置く。(双方は和解するものではなく、とこしえに敵対するものである)

 彼(キリスト)は、おまえの頭(蛇の支配者である悪魔)を踏み砕き、おまえ(悪魔の子)は、彼のかかと(キリストを生む「かかと」と呼ばれるヤコブの子孫、すなわち、ユダヤ民族)にかみつく。(悪魔の子は、ユダヤ民族、すなわちイスラエルに敵対して、ユダヤ民族に対する神の御計画を憎んで常に攻撃する)」(創世記3:15)

 

 神は、この「かかと【ヤコブ】」から、キリストを出されるのです。

 人の思いよりも、神の御意志は高く、また、人がどんな計画を持とうとしても、神御自身の御計画は必ず実現するのです。

 

 弟であるヤコブが、兄のエサウから「長子の権利」を買い、また、父イサクの祝福を奪い取ったその陰には、神の御心を知る母リベカがいました。

 兄エサウから長子の権利を奪い、父イサクを騙して祝福を相続したヤコブの罪は、人間的には許されない罪に思われますが、神はヤコブの信仰を祝福して仰せられます。

 

 「わたし(主)は、あなた(ヤコブ)に約束したことを成し遂げるまで、決してあなたを捨てない。」(創世記28:15)