「神はアブラハムに仰せられた。
『あなたの妻サライのことだが、その名をサライと呼んではならない。その名はサラとなるからだ。わたしはサラを祝福しよう。確かに、彼女によって、あなたにひとりの男の子を与えよう。
わたしは彼女を祝福する。彼女は国々の母となり、国々の民の王たちが、彼女から出て来る。』
アブラハムはひれ伏し、そして笑ったが、心の中で言った。
『百歳の者に子どもが生まれようか。サラにしても、九十歳の女が子を生むことができようか。』
そして、アブラハムは神に申し上げた。『どうかイシュマエルが、あなたの御前で生きながらえますように。』」(創世記17:15-18)
アブラハムは、神との契約のしるし(割礼)をいただく前に、妻サライの女奴隷ハガルとの間にひとりの男の子をもうけていました。
不妊の女で年老いた妻サライがアブラムの跡取りを得るために、夫アブラムに彼女の女奴隷ハガルを妻として与えたからです。
ハガルは自分がみごもったことを知って、自分の女主人サライを見下げるようになりました。それで、サライがハガルをいじめたので、ハガルはサライのもとを逃げ去ると、主の使いは彼女を見つけ、言いました。
「見よ。あなたはみごもっている。男の子を産もうとしている。その子をイシュマエルと名づけなさい。主があなたの苦しみを聞き入れられたから。
彼は野生のろばのような人となり、その手は、すべての人に逆らい、すべての人の手も、彼に逆らう。彼はすべての兄弟に敵対して住もう。」(創世記16:11,12)
神は、兄弟に敵対する者としてイシュマエルに生を与えられました。
アブラハムは、神が約束してくださる土地の所有の契約と祝福を相続する、自分の跡取りを、女奴隷ハガルによって得たと考えていました。
しかし、アブラムが九十九歳になったとき主はアブラムに現われ、彼に告げて仰せられました。
「わたしは、この、わたしの契約をあなたと結ぶ。あなたは多くの国民の父となる。あなたの名は、もう、アブラムと呼んではならない。あなたの名はアブラハムとなる。わたしが、あなたを多くの国民の父とするからである。
わたしは、あなたの子孫をおびただしく増やし、あなたを幾つかの国民とする。あなたから、王たちが出て来よう。
わたしは、わたしの契約を、わたしとあなたとの間に、そしてあなたの後のあなたの子孫との間に、代々にわたる永遠の契約として立てる。わたしがあなたの神、あなたの後の子孫の神となるためである。
わたしは、あなたが滞在している地、すなわちカナンの全土を、あなたとあなたの後のあなたの子孫に永遠の所有として与える。わたしは、彼らの神となる。」(創世記17:3-8)
神は、カナンの全土を相続するアブラハムの子孫について、御自身が彼らの神となる、と仰せられました。
以前、神はアブラムを召し、カランの地からカナンの地に導き入れて、契約を結んで、まだ、子どものいなかったアブラムに仰せられました。
「わたしはあなたの子孫に、この地を与える。エジプトの川から、あの大川、ユーフラテス川まで。ケニ人、ケナズ人、カデモニ人、ヘテ人、ぺリジ人、レファイム人、エモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人を。」(創世記15:18-21)
主は、子どものないアブラムに、「あなたの子孫に与える。」と仰せられたのです。ナイル川からユーフラテス川までの広大な土地をです。
主は、アブラムをアブラハムに、妻サライをサラに改め、サラにひとりの男の子を与える、と仰せられました。しかし、年老いたアブラハムは笑いました。
「すると神は仰せられた。
『いや、あなたの妻サラが、あなたに男の子を産むのだ。あなたはその子をイサクと名づけなさい。わたしは彼とわたしの契約を立て、それを彼の後の子孫のために永遠の契約とする。
イシュマエルについては、あなたの言うことを聞き入れた。確かに、わたしは彼を祝福し、彼の子孫を増やし、非常に増し加えよう。彼は十二人の族長たちを生む。わたしは彼を大いなる国民としよう。
しかしわたしは、来年の今頃サラがあなたに産むイサクと、わたしの契約を立てる。』
アブラムとサライが望んだのは、アブラムの跡取りでした。
しかし、神がアブラムに与えるものは、アブラムの跡取りではなく、地上のすべての民族を祝福するアブラハムの子孫でした。
それゆえ、主は、アブラムとその妻を、アブラハムとサラに改め、彼らを国々の父、国々の母とされました。すべての国民、すべての民族を祝福する子孫がアブラハムとサラから出て来るからです。
アブラハムが包皮の肉を切り捨て、契約のしるしを肉体に刻むと、主は、アブラハムに現われ、彼は三人の神の人を迎えました。するとひとりがいいました。
「わたしは来年の今頃、必ずあなたのところに戻って来ます。そのとき、あなたの妻サラには、男の子ができている。」(創世記18:10)
「主は、約束されたとおり、サラを顧みて、仰せられたとおりに主はサラになさった。サラはみごもり、そして神がアブラハムに言われたその時期に、年老いたアブラハムに男の子を産んだ。
アブラハムは、自分に生まれた子、サラが自分に産んだ子をイサクと名づけた。そしてアブラハムは、神が彼に命じられたとおり、八日目になった自分の子イサクに割礼を施した。
アブラハムは、その子イサクが生まれたときは百歳であった。」(創世記21:15)
主がアブラムに、「わたしはあなたの子孫にこの土地を与える。」と仰せられた「あなたの子孫」は、妻サラが産むイサクのことでした。
神はアブラハムに仰せられました。
「イサクから出る者が、あなたの子孫と呼ばれる。」(創世記21:12)
神は、「わたしの契約を、あなたの子孫(アブラハムの子孫)との間に、代々にわたる永遠の契約として立てる。また、カナンの全土を、あなたの子孫に永遠の所有として与える。わたしは、彼らの神となる。」と仰せられました。
その通り、神は、アブラハムの子孫(アブラハム、イサク、ヤコブの子孫)イスラエル(ユダヤ民族)と契約を結ばれて、神の律法を彼らにお与えになりイスラエルを神に仕える神の民となさいました。そして、御自身をイスラエルの神と名乗られました。
神が仰せられた「わたしは彼ら(アブラハムの子孫)の神となる。」の約束が実現したのです。
神は、御自身の民イスラエルに、御自分のひとり子を遣わされました。世の罪を取り除く神の子羊イエスです。神は、アブラハムの子孫イスラエルに遣わされた神の子羊イエス・キリストによって、すべての国民、すべての民族、すべての国語の人々に永遠の祝福をお与えになります。
神の子羊イエスは、すべての罪を贖い、罪を赦し、永遠のいのちを得させる神の御子なのです。こうして、アブラハムの子孫は、造られたものすべての祝福となりました。
「アブラハムは自分の全財産をイサクに与えた。しかしアブラハムのそばめの子らには、アブラハムは贈り物を与え、彼の生存中に、彼らを東のほう、東方の国にやって、自分の子イサクから遠ざけた。」(創世記25:5,6)
アブラハムを祝福し、神がアブラハムにお与えになるものは、アブラハムの子孫のためであり、神のものです。アブラハムの肉を喜ばせるためでなく、神の御計画を成し遂げるためです。
イスラエルの国土は、日本の四国くらいの面積です。神は、アブラハムに、ナイル川からユーフラテス川までの広大なカナン全土をアブラハムの子孫に与えると仰せられました。しかし、アブラハムの子孫イスラエルの相続する土地はわずかです。ほとんどをイサクに敵対する異母兄弟、ヤコブに敵対する兄弟が陣取っています。しかも、それだけでは飽き足らず、四国ほどの小さな国土(アブラハムの子孫の相続地)に侵攻しています。
アブラハムは、自分が神に召された者であることを知っていました。契約も祝福も、神の国のためです。アブラハムの子孫もまた、神の国のためです。
神がお定めになったアブラハムの子孫イスラエルは、アブラハムの信仰を受け継いで、アブラハムの神に仕え、神の御計画を実現するために神と契約を結ぶ神の民なのです。
イスラエルは、神が選ばれた神の都エルサレムに、神の神殿を建てました。(現在、イスラム教のモスクが建っています。)そして、神のひとり子キリストを生みました。
イスラエルは、神が罪の生贄のために備えられた神の子羊を、木にかけて(木につるされた者は神に呪われた者と申命記21:23にあります。)屠り、罪の贖いの血を流しました。
神の子羊イエス・キリストの血は神の御心にかない、神は、神の子羊の贖いの血によって罪を赦し、義とされます。キリストの血の贖いを信じ、その赦しを受ける者は、罪の呪いから解放されます。
神は、子羊イエスを死から甦らせ、永遠に生きるキリストとされました。キリストは、罪を贖う神の子羊イエスを信じる者に、生かす御霊を分け与え、永遠のいのちを得させてくださいます。
キリストは再びイスラエルに来られて、地上に神の国を建てられます。
キリストは天の軍勢とともに来られて、イスラエルを憎むもの、イスラエルの敵を絶滅し、神がアブラハムに約束されたカナン全土をイスラエルの支族ごとに分割し分け与えて、エルサレムの王座に着かれます。そして、世界を治める王の王となられ、武器のない平和な世界を治められるのです。