「私たち（ユダヤ人たち）は、『アブラハムには、その信仰が義とみなされた。』と言っていますが、どのようにして、その信仰が義とみなされたのでしょうか。割礼を受けてからでしょうか。まだ割礼を受けていないときでしょうか。割礼を受けてからではなく、割礼を受けていないときにです。
彼（アブラハム）は、割礼を受けていないとき信仰によって義と認められたことの証印として、割礼というしるしを受けたのです。それは、彼が、割礼を受けないままで信じて義と認められるすべての人（異邦人）の父となり、また割礼のある者の父となるためです。すなわち、割礼を受けているだけではなく、私たち（ユダヤ人たち）の父アブラハムが無割礼のときに持った信仰の足跡に従って歩む者（神のことばを信じて従う者）の父となるためです。
というのは、世界の相続人となるという約束が、アブラハムに、あるいはまた、その子孫（アブラハムの子孫）に与えられたのは、律法によってではなく、信仰の義によったからです。
もし律法による者が相続人であるとするなら、信仰はむなしくなり、（御救いの）約束は無効になってしまいます。（御救いは神が遣わされるメシアによるからです。神から出た救い主イエス・キリストを信じる信仰によって、神に義とされ、御救いを受けるのです。）
律法は怒りを招くものであり、律法のないところには違反もありません。（法律に定められていない事柄についてはさばくことができません。規定がないから違反もないのです。）（神がイスラエルにお与えになった律法は、神の国に招かれた者が神の国の法を守る者とされるためです。生まれつきの人間に、神の国の法を守ることは不可能です。人は、自分の良心に従うことで神に出会うこともありますが、自我が妨げると良心はうつろとなり、自分の良心に従うことのできる人はまれです。それゆえ、民族として招いておられる神の民ユダヤ民族には、神は、神の律法をお与えになったのです。）
そのようなわけで、世界の相続人（世界の祝福の基）となることは、信仰（神のことばを信じ従うこと）によるのです。それは、（神の子羊イエス・キリストによる贖いの血のゆえに、価なしに義と認められるという）恵みによるためであり、こうして（御救いの）約束がすべての子孫（アブラハムの御救いの約束を受け継ぐ子孫）に、すなわち、律法を持っている人々にだけでなく、アブラハムの信仰にならう人々にも保証されるためなのです。
『わたし（神）は、あなた（アブラハム）をあらゆる国の人々の父とした。』と書いてあるとおりに、アブラハムは私たちすべての者の父（信仰の父）なのです。
このことは、彼（アブラハム）が信じた神（全知全能の神、創造主）、すなわち死者を生かし、無いものを有るもののようにお呼びになる方（生けるまことの神）の御前で、そうなのです。
彼（アブラハム）は望みえないときに望みを抱いて信じました。それは、『あなたの子孫はこのようになる。』と言われていたとおりに、彼（アブラハム）があらゆる国の人々の父となるためでした。（一人の子どももいないときに、「さあ、天を見上げなさい。星を数えることができるなら、それを数えなさい。あなたの子孫はこのようになる。」〈創世記１５：５〉と神に仰せられ、七十五歳のアブラハムは信じました。また、アブラハムの子孫にカナンの地を相続させることや、神御自身がアブラハムの子孫の神となられ、神が、アブラハムを多くの国民の父とすること〈創世記１７：５〉、そして、「あなたの子孫（敵の門を勝ち取るキリスト）によって、地のすべての国々は祝福を受けるようになる。」〈創世記２２，１８〉と約束されたのでした。）
アブラハムは、およそ百歳になって、自分のからだが死んだも同然であることと、およそ九十歳の妻サラの胎の死んでいる（閉経した）こととを認めても、その信仰は弱りませんでした。
彼（アブラハム）は、不信仰によって神の約束を疑うようなことをせず、反対に、信仰がますます強くなって、神に栄光を帰し、神には約束されたことを成就する力があることを堅く信じました。
だからこそ、それ（アブラハムの信仰）が彼の義と認められたのです。
しかし、『彼（アブラハム）の義とみなされた。』と書いてあるのは、ただ（アブラハム）のためだけでなく、また私たち（御救いを受ける人々）のためです。すなわち、私たちの主イエスを死者の中から甦らせた方（救い主イエス・キリストを遣わされた全能の神）を信じる私たちも、その信仰（神の子羊イエス・キリストを信じる信仰）を義とみなされるのです。
主イエスは、私たちの罪の（贖いの）ために死に渡され（十字架で死なれ）、（神の御子イエス・キリストを信じる）私たちが義と認められるために、（死から）甦られたからです。（神は、神の子羊イエスの罪の贖いの血と罪の赦しだけではなく、子羊イエスを死から甦らせることによって、子羊イエスにキリストの権威をお与えになり、イエス・キリストを信じる人々に、生かす御霊をお授けになるのです。）」（ローマ４：９－２５）
割礼は、アブラハムが信仰によって義と認められたことの証印としてのしるしでした。割礼は、神に受け入れられたもののしるしです。
アブラハムは、割礼を受けたから義と認められたのではなく、信仰によって義と認められたので、その証印として割礼を受けたのです。アブラハムは、割礼を受ける前に、義と認められていました。
それは、（肉の）割礼を受けないままで信じて義と認められるすべての人の父となり、また割礼のある者の父となるためでした。
すなわち、アブラハムが無割礼のときに持った信仰の足跡に従って歩む者の父となるためです。
アブラハムに約束されたアブラハムの子孫は、敵の門を勝ち取るアブラハムの子孫キリスト（悪魔を踏み砕き世の罪を取り除く神の子羊イエス）によって、全世界に御救いをもたらす祝福の基なのです。
アブラハムの信仰が義と認められた証印は、割礼でした。
割礼のしるしを持つアブラハムの血肉の子孫の中で、アブラハムの契約と祝福を相続するアブラハムの子孫は、アブラハム、イサク、ヤコブの子孫イスラエルです。神は、イスラエルを「アブラハムの子孫」と呼び、「わたしの民（神の民）」と呼ばれます。
神は、神の民として選ばれたユダヤ民族（イスラエル）と契約を結び、神の律法を与えられました。
アブラハムの子孫イスラエルが「神の民」として認められた証印は、律法（モーセの律法）でした。割礼を受けていることが神の民の証印ではなく、割礼と律法とが、神の民の証印です。
パウロは言います。
「人が義と認められるのは、律法の行ないによるのではなく、信仰によるというのが、私たち（パウロや使徒たち）の考えです。
それとも、神はユダヤ人だけの神でしょうか。異邦人にとっても神ではないのでしょうか。確かに神は、異邦人にとっても、神です。
神が唯一ならばそうです。（神はおひとりです。すべてのものは神のものなのです。）この神は、割礼のある者を信仰によって義と認めてくださるとともに、割礼のない者（異邦人）をも、（神の御子イエス・キリストを信じる）信仰によって義と認めてくださるのです。」（ローマ３：２８－３０）
神の御子イエス・キリストを信じる信仰によって義と認められたことの証印として、キリストの御霊を受けます。
キリストが授けられる真理の御霊は、神に義と認められたことのしるしです。
「これぞ、わたし（神）の選んだしもべ、わたしの心の喜ぶわたしの愛する者。わたしは彼（キリスト）の上にわたしの霊（聖霊、すなわち神の御霊）を置き、彼（御霊を持つ人）は異邦人に公義を宣べる。」（マタイ１２：１８）
バプテスマのヨハネは神の御告げを受けていました。「聖霊がある方の上に下って、その上に留まられるのがあなたに見えたなら、その方こそ、聖霊によってバプテスマを授ける方（神の御子キリスト）です。」（ヨハネ１：３３）
バプテスマのヨハネは、水から上がられたナザレのイエスに聖霊が留まられるのを見ました。それで、ヨハネはナザレのイエスを「見よ。世の罪を取り除く神の子羊。」と言い、この方（ナザレのイエス）が神の子であると証言しました。
キリスト（救い主）のしるしは、聖霊でした。
キリストは、神の御子イエス・キリストを信じるひとりひとりに、聖霊のバプテスマを授けられます。
キリスト・イエスにあって神のものである証印は、聖霊です。
聖霊は、真理の御霊であり、キリストの御霊です。御霊を宿す者は、聖霊の宮です。御霊は、キリストのものである証印であり、神の民のしるしです。御霊は、キリストの血による罪の赦しを与え、心に割礼を受ける新しい創造としてくださいます。
御霊はキリストのものを受けて、真理に導き入れてくださいます。御霊は自分から語るのではなく、（キリスト・イエスから）聞くままを話し、また、やがて起ころうとしていることを示してくださいます。
私たちが神の子どもであることは、御霊御自身が、私たちの霊とともに、証してくださいます。
信仰によって義とされたアブラハムの子孫であるダビデの子（神の御子イエス・キリスト）は、信仰を持つひとりひとりにキリストの御霊を分け与えて、神の子どもたちを生んでいかれます。
アブラハムは、血肉の子孫割礼の民ユダヤ人にとっても、信仰の子孫無割礼の者にとっても、「信仰の父」と呼ばれます。
そして、アブラハムのひとりの子孫として来られた敵の門を勝ち取るキリスト（救世主）の信仰によって、神がアブラハムに、また、アブラハムの子孫イスラエルに約束されたメシア（神の子羊イエス・キリスト）による御救いは完成するのです。
