ユダヤ民族の父ヤコブ(アブラハムとサラのひとり子イサクの子)は、双子の兄エサウを押しのけて長子の権利を奪い取り、父イサクが兄エサウに与えようとした祝福をも奪い取りました。
ヤコブの妻リベカの胎内でふたりはぶつかり合い、困ったリベカは、主の御心を求めに行きました。
「すると主は彼女に仰せられた。
『二つの国があなたの胎内にあり、二つの国民があなたから分かれ出る。
一つの国民は他の国民より強く、兄が弟に仕える。』
出産の時が満ちると、見よ、双子が胎内にいた。
最初に出て来た子は、赤くて、全身毛衣のようであった。それでその子をエサウ(「赤い」の意)と名づけた。
そのあとで弟が出て来たが、その手はエサウのかかとをつかんでいた。それでその子をヤコブ(「かかと」の意)と名づけた。イサクは彼らを生んだとき、六十歳であった。」(創世記25:23-26)
ヤコブは兄エサウのかかとをつかんで生まれて来たのです。そして、ヤコブは「かかと」を意味する名前をいただくこととなりました。
神は、エデンの園で人が罪に堕ちたとき、人を罪に陥れた蛇に仰せられました。
「わたし(神)は、おまえ(蛇)と女(人)との間に、また、おまえの子孫(獣の子)と女の子孫(人の子)との間に、敵意を置く。
彼(神が悪魔を滅ぼすために遣わす人の子キリスト)は、おまえの頭(悪魔)を踏み砕き、おまえ(獣の子)は、彼(人の子キリスト、すなわち神のひとり子)のかかと(ヤコブ)にかみつく。」(創世記3:15)
兄のエサウが弟ヤコブに殺意を持っていることを知った母リベカは、ヤコブを自分の兄ラバンのもとへと旅立たせました。
ヤコブはラバンのもとに身を寄せ、ラバンの娘のレアとラケルを妻としました。また、レアとラケルが与えたので、女奴隷ジルパと女奴隷ビルハをも妻としました。
時が来て、ヤコブはふたりの妻とふたりの女奴隷と、それぞれの子どもたちを連れて、父イサクのもとへ帰りました。
ヤコブは、兄エサウが来て、ヤコブ一家を打ちはしないかと恐れていました。
神は、かつて、伯父ラバンのもとへ逃げるヤコブに会い、「わたし(アブラハム、イサクの神)は必ずあなた(ヤコブ)をしあわせにし、あなたの子孫を多くて数えきれない海の砂のようにする。』と仰せられました。
ヤコブはエサウに贈り物を与えてエサウの心をなだめようと考え、贈り物をヤコブより先に通らせ、彼は宿営地で夜を過ごしました。
しかし、ヤコブはその夜のうちに起きて、ふたりの妻と、ふたりの女奴隷と、十一人の子どもたちを連れて、ヤボクの渡しを渡らせ、自分の持ち物も渡らせました。
ヤコブはひとりだけ、あとに残っていました。すると、ある人(神の人)が夜明けまでヤコブと格闘しました。
ところが、その人は、ヤコブに勝てないのを見てとって、ヤコブのもものつがいを打ったので、その人と格闘しているうちに、ヤコブのもものつがいがはずれたのですが、ヤコブは決してあきらめませんでした。
「するとその人(神の人)は言った。『わたしを去らせよ。夜が明けるから。』しかし、ヤコブは答えた。『私はあなたを去らせません。私を祝福してくださらなければ。』
その人は言った。『あなたの名は何というのか。』彼は答えた。『ヤコブ(かかと)です。』
その人は言った。『あなたの名は、もうヤコブとは呼ばれない。イスラエルだ。あなたは神と戦い、人と戦って、勝ったからだ。』」(創世記32:26-28)
その人は、その場でヤコブを祝福しました。ヤコブはもののために足をひきずりました。
ヤコブは、その所の名を「ペヌエル」と呼びました。「私は顔と顔とを合わせて神を見たのに、わたしのいのちは救われた。」という意味です。
ヤコブと格闘した神の人は、ヤコブに勝てないのを見てとって、ヤコブのもののつがいを打ちました。それでも、ヤコブは神の人を去らせませんでした。
ヤコブは、神(神の人)と格闘して勝って祝福を勝ち取り、人(神がともにおられるヤコブを妬んで苦しめるラバン)と戦って祝福を勝ち取りました。
神の人は、神と戦い、人と戦って勝ったヤコブの名を、「イスラエル」と呼びました。祝福を得るために神と戦い、イスラエルは勝利を得ました。
ヤコブの十二人の息子を族長とするユダヤ民族は、神が父ヤコブにお与えになられた「イスラエル」の名で呼ばれる民となったのです。
終わりの時代に、神は、ひとり子イエス・キリストをイスラエルに遣わし、永遠のいのちを得させる「いのちの道」を設けられました。憐れみ深く、慈しみ深い神は、神の子羊イエス・キリストの御救いを信じて、神の御子イエス・キリストに従う「いのちの道」を、世にお与えになったのです。
イエスの弟子たちは、神の御子イエス・キリストを信じないユダヤ人たちから迫害され、いのちを狙われ殺されました。イエスの弟子たちは、神のことばに忠実に従い、人間の教え(神に背く悪しき霊)と戦い殉教し、信仰の勝利を得て、永遠のいのちを得るのです。
神は、ヤコブの子孫と契約を結び、神の祭司の民イスラエルを立てられました。神は、祭司の国民イスラエルに神の律法を与えられました。そして、神は約束どおり、イスラエルに、アブラハムにお与えになったカナンの地(現イスラエルの地)を与えられました。
終わりの時代に、神は、ひとり子イエス・キリストによって、イエス・キリストを「主」とし「王」とする民と新しい契約を結び、天の御国と永遠のいのちを得させるという約束をされました。そして、神は、新しい契約のイスラエル、すなわち、とこしえのイスラエルに、生かす御霊【真理の御霊】を授けられます。
とこしえのイスラエルは、永遠のいのちの祝福を妨げるあらゆるものと戦って勝利を得る者に与えられる、神の国です。イスラエルの王イエス・キリストが治められるイスラエル王国の国民です。
ヤコブは、祝福を得るまで戦い続けました。戦いの手を止めませんでした。そして、約束のものを得たのです。
ヤコブには、神のことばがありました。
「わたし(ヤコブのかたわらに立たれた主)はあなた(ヤコブ)の父アブラハムの神、イサクの神、主である。わたしはあなたが横たわっているこの地(カナンの地)を、あなたとあなたの子孫とに与える。
あなたの子孫は地のちりのように多くなり、あなたは、西、東、北、南へと広がり、地上のすべての民族は、あなたとあなたの子孫によって祝福される。(すなわち、世界を救うのはユダヤ民族である、ということです。)
見よ。わたしはあなたとともにあり、あなたがどこに行っても、あなたを守り、あなたをこの地(カナンの地)に連れ戻そう。わたしは、あなたに約束したことを成し遂げるまで、決してあなたを捨てない。(すなわち、世界のどこにいても、神はユダヤ人を見つけ、彼らを守り、約束したことを成し遂げる、ということです。)」(創世記28:13-15)
イスラエルは、約束された神の祝福を得るために、戦うものです。
イエス・キリストのしもべたちもまた、とこしえのイスラエルの民として、神の恵みを受け取るまで、あきらめないで戦い、勝利して祝福を手にする、信仰の人々なのです。