あるルーマニア人のお話です。
共産主義国家であるルーマニアでキリスト信仰を守るのは命懸けの事でした。拷問を受けるか、牢獄に入れられるか、処刑されるか。
イリエ・コロアマ師は幼い頃から神に忠実な人でした。第二次世界大戦後、ルーマニアの最後の国王が追放され、ルーマニアから自由が奪い去られたのです。
キリストに忠実な彼のいのちを執拗に狙う悪魔のような党員がいました。その党員が死の病に倒れ、今は病院のベッドの上で死を待つばかりとなっている事を知り安堵しました。
神が自分の命をその党員から救い出して下さったと思い、コロアマ師は神に感謝しました。
ところが、神はコロアマ師に、この党員の所に行きキリストの福音を伝えるように、と語られました。
「嘘でしょ、彼は私の命を狙っていた人ですよ。行きたくありません。彼が怖いのです。」
しかし、神は「わたしはそのものに計画を持っている。彼もまたわたしの子である。行きなさい。」
乗り気しないまま、病院に行きました。話したって信じないだろう。悪党なんだから。あんな悪党に信じて欲しくはない。
過去の恐怖が蘇ります。恐る恐る彼に近づきました。
彼の姿は見る影もありませんでした。あの凶暴な男はどこへ行ったのでしょう。息絶え絶えのやつれた弱弱しい男が横たわっています。
コロアマ師は勇気づけられました。こんな体では襲ってくる事はない。悪態をつく事も出来ないだろう。
コロアマ師が思った通り、彼はコロアマ師に目を向け息をするのがやっとでした。
安心してキリストの話をし始めました。キリストをほのめかすだけでも命を狙った宿敵を前に、堂々とはっきりとキリストを証しました。
コロアマ師は、彼がキリストを受け入れる事を望んではいませんでした。ただ、神がそうするように望まれたから、自分の意思に反して福音を語りました。
意に反して、なんと党員は涙を浮かべて福音の言葉を受け入れ、キリストを信じるではありませんか。
これを機に、この党員はコロアマ師の兄弟、神の家族の一員になったのです。
キリストを信じた党員に、神は速やかな癒しを施されました。やせ細った体は健康な体となり日常生活に戻りました。
日常生活に戻っても信仰は無くなりませんでした。この党員はコロアマ師を政府から守るために働く者となりました。
宿敵だった党員は、共産主義の政府からコロアマ師の命と信仰を守る、頼もしい最も強力で信頼出来る協力者となったのです。
神の計画は計り知れません。敵をも味方に変えられるのです。
神の導きに従う時、荒れ地に川を、暗闇にともしびを与えて下さるのです。
神は私達の歩みの先を知り、人には理解出来ないけれども、確かに安全で正しい道へと導いて下さるんだな、と思いました。
イエスのことばがあります。
「わたしがしていることは、今はあなたにはわからないが、あとでわかるようになます。」