ふしぎないのち

神が働く不思議な体験

「感謝します」は神の国

 

  アメリカに感謝のことを指導する教師がいました。感謝と賛美に神が働かれる証を沢山持っておられました。

 

  あるご婦人が相談に来られました。ご主人もご婦人も熱心なクリスチャンで、教会でも役員をしているようなご夫妻です。人々からも敬われ、立派なクリスチャンホームでした。

 

  娘さんは、幼い頃から日曜学校で学び、イエス様も信じていました。ところが、この娘さんが思春期に入り、両親に反発するようになりました。

 

  両親には、教会での立場があります。家庭の問題を知られたくはありません。教会の人々のお手本のようなクリスチャンホームを維持するために、娘を厳しく叱りました。

 

  娘さんの態度が以前とは変わって来ました。両親に対してぞんざいな態度をとるようになり、家の中のものを壊したり、両親は娘に手を焼くようになりました。

 

  教会でしっかりとした立場で信仰的にも尊敬されている両親にしてみれば、あってはならないことでした。

 

  とうとう、その教師の元に行き、相談しました。その教師は、感謝するように、と指導しました。とても、感謝出来る状況ではありません。娘を変えるための方法を聞きたかったのです。

 

  しかし、教師は、感謝にどんな力があるのかを、いろんな証を聞かせて知らせ、神に今の状況や娘さんの態度すべてを感謝するように伝えました。

 

  ご夫妻は不服そうでしたが、みことばにも「すべての事について感謝しなさい。」とありますから、なんとか説得しました。

 

  両親は家で感謝することを試みましたが、良くなるどころか益々悪化していくようです。感謝している両親を見て、娘は嘲笑うかのように荒々しくなりました。両親は苛立ちを押さえる事が難しくなって、この方法では解決しないのでは、と焦りました。

 

  感謝を指導してくれる教師に伝えると、感謝の感情が伴わなくてもいいのです。神に感謝し続けていくうちに、神が感謝の心にされます。状況ではなくて、神に信頼して、感謝する事があなた達の日常となるくらいに、感謝の言葉を言い続けるように、と言われました。

 

  状況が良くても悪くても、神に感謝するとは、両親にとって、新しい信仰のチャレンジでした。教会で熱心に仕えて来た忠実なふたりです。この新しいチャレンジにも根気よく向かいました。

 

  娘が汚い言葉を吐く時も、「主よ、感謝します。」娘が物にあたる時も、「主よ、感謝します。」両親は感謝を徹底的にしました。感情によってではなく、口癖のように、口が開くようになっていました。

 

  娘が両親の顔を見ながら、ふたりが大事にしていた高価な花瓶を持ち上げて、顔を歪めて笑ったかと思ったら、両親の目を見ながら、花瓶を床に落としました。大きな音をたてて花瓶は砕け散りました。

 

  両親は娘を止める事もなく、ただジッと見ていました。怒るのでもなく、両親の感情は動きません。抵抗しません。屠り場に引かれて行く子羊のようです。そして、ガッシャーンという音と同時に、ふたりは思わず、「主よ、感謝します」と言ったのです。

 

  すると、今まで反抗的で顔まで変わってしまっていた娘が、「わかった!」と以前のような穏やかな顔で言ったのでした。

 

  その時から、娘さんの反抗はぴったりと止みました。反抗していた事が嘘のように素直な娘さんになり、イエス様と両親を愛する健全な信仰者になったのです。

 

  私は、このお話を聞いた時、思春期の娘さんは、両親の教会での姿と家での姿の二面性に反発していたのでは、と憶測してしまいました。

 

  教会では模範的な信仰者なのに、家の中では、もしかしたら、教会の不満や教会の人を悪く話していたのかも知れないなぁ。親の教会での姿は、仮面をかぶっているようで、両親に訴えても、言い負かされるだけだから、自分の存在をもって抗議したのではないのか、と思ってしまいました。

 

  その結果、両親の中に偽りのない信仰を確認する事が出来たので、娘さんにとっては、尊敬する両親が戻って来た、と思えたのでしょう。

 

  実は、娘さんの方が心を痛めて、先に神に訴えていたのかも知れません。

 

  そのご両親は、神に感謝するという事が自分の日常となった時、問題が解決しただけではなく、神にゆだねる信仰、神に信頼する純真な信仰、神に立つ不動の信仰も得たのでした。そして、娘さんは、ご両親のうちにキリストを見たのでしょう。神を畏れる真の信仰を見たのでしょう。

 

  初めは感情が伴わない「主よ、感謝します」が、神にゆだね、神に信頼する「主よ、感謝します」になったのでした。

 

  心が伴った「主よ、感謝します」に、神の御国の平安がありました。

 

 

    著作本 『人はどこから来てどこへ行くのか』鍵谷著 (青い表紙の本)

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