サウロ（後のパウロ）は、厳格なパリサイ派に属する、熱心なユダヤ教徒でした。ナザレのイエスを神の子キリストだと主張する、ナザレ派の人々を異端であるとし、殺意に燃えて彼らを迫害し、ナザレ人イエスの名に強硬に敵対していました。
サウロは、祭司長達からキリスト信者を捕縛する権限と委任を受けて、ダマスコに向かう途中で、太陽よりも明るく輝く天の光の中からの声を聞きました。その声は、へブルで語りました。
「サウロ。サウロ。何故わたしを迫害するのか。とげのついた棒を蹴るのは、あなたにとって痛いことだ。」
「主よ。あなたはどなたですか」とパウロが尋ねると、主は言われました。
「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。起き上がって、自分の足で立ちなさい。わたしがあなたに現れたのは、あなたの見たこと、また、これから後わたしがあなたに現れて示そうとすることについて、あなたを奉仕者、また証人に任命するためである。
わたしは、この民（ユダヤ人）と異邦人との中からあなたを救い出し、彼らのところに遣わす。それは彼らの目を開いて、暗闇から光に、サタンの支配から神に立ち返らせ、わたしを信じる信仰によって、彼らに罪の赦しを得させ、聖なるものとされた人々の中にあって御国を受け継がせるためである。」
サウロは、イエスを主キリストとする信仰者を迫害しているのは、実はイエスご自身を迫害していることであり、また、ユダヤ人が長い間メシアが来られることを信じて待ち望んでいた、天から来られたキリスト、神から遣わされた救世主キリストを迫害していることなのだ、と主の声で知りました。
主は言われました。「あなたの足で立ちなさい。」サウロは、祭司長達の権限と委任を受けて、熱心に働いていました。しかし、祭司長の権限から外れ、自分の信仰で立つようにと言われたのです。
ユダヤ人は、イエスを信じたら、ユダヤの会堂から追い出されます。ユダヤ人のコミュニティから居場所を失うのです。ユダヤ人達は、会堂から追い出されることを恐れて、イエスを信じるのを公に告白することをためらっていたのです。
イエスはサウロに、ユダヤ会堂から出て、キリスト・イエスの奉仕者となるように命じられ、イエスの啓示の証人に任命されました。主ご自身が命を狙うユダヤ人や異邦人からサウロを守り、神の権限によって遣わすことを約束されたのです。
イエスの目的は、サウロの話を聞く者の霊の目を開いて、サタンが支配する暗闇でもがいている人々に神のことばの光を与え、キリスト・イエスを信じる信仰によって、彼らに罪の赦しを得させて重荷を下ろさせ、闇の支配からの解放と御霊にある自由と聖なるものとされた人々（主にある兄弟姉妹）の中にあって、神の御国を受け継がせるためなのです。
サウロは、主の声を聞き、今まで自分が信じてやってきたことが、すべて神への反逆の行為だったことに気づきました。イエスはキリストではない。自分を神の子と自称するイエスは、聖なる神を冒瀆する犯罪者である、死刑に価する者だと信じてきました。神が選ばれた聖なる民イスラエルから、神を冒瀆する者達は取り除かねばならない、と固く信じていました。
かつてイエスは、群衆と弟子達に言われました。
「律法学者やパリサイ人達は、モーセの座を占めています。ですから、彼らがあなたがたに言うことはみな、行い、守りなさい。しかし、彼らの行いをまねてはいけません。彼らは言うことは言うが、実行しないからです。
しかし、忌まわしいものだ。偽善の律法学者、パリサイ人達。彼らは、人々から天の御国をさえぎっているのです。自分も入らず、入ろうとしている人々をも入らせないのです。彼らは、人一倍ひどい罰を受けます。
忌まわしいものだ。愚かで、目の見えぬ人達。目の見えぬ手引きども。改宗者ができると、その人を自分より倍も悪いゲヘナ（永遠に燃える火の池）の子にするからです。」
イエスは、宗教に厳格なパリサイ人や律法学者に、厳しいことばを投げかけておられます。
「忌まわしいものだ。偽善の律法学者、パリサイ人達。あなたがたは白く塗った墓のようなものです。墓はその外側は美しく見えても、内側は、死人の骨やあらゆる汚れたものがいっぱいなように、あなたがたも、外側は人に正しいと見えても、内側は偽善と不法（神への反逆）でいっぱいです。
おまえたち蛇のすえども。おまえ達は、ゲヘナの刑罰をどうして逃れることができよう。預言者を殺した者達の子孫として、あなたがたも先祖の罪の目盛りの不足分を満たしなさい。だから、わたしが預言者、知者、律法学者達を遣わすと、おまえ達はそのうちのある者を殺し、十字架につけ、またある者を会堂で鞭打ち、町から町へと迫害して行くのです。」
パウロは、復活のイエスに出会いました。イエスの声を自分の耳で聞いたのです。自分の中にあった信仰が、実は、神に受け入れられるものではなかったことを知ったのです。
神に受け入れられる信仰は、神御自身が天から遣わされた贖いの子羊イエスを信じることでした。何故ならば、イエスこそが、神が預言者達に告げておられたメシアだからです。
イエス以外に、人を罪の呪いから解き放ち、死から救い出し、永遠のいのちを与え、復活の霊のからだを与えて、永遠の御国で生きる新しい人を創造される、救世主はいないからです。
罪の苦しみから救い出し慰めを与える人はいるかも知れません。死の恐れを和らげ希望を与えてくれる人はいるかも知れません。しかし、その人は、慰めを受け、希望を得た人にとっての救いです。
救世主とは、世のすべての悩みから救い出し解放して下さる、すべての人にとっての救い主です。イエス・キリストの救いは、世のすべての人のためです。「主」と言うからには、神であるということです。イエスは、悩みからではなく、世そのものから救い出してくださる、救世主なのです。
神から救世主の油を注がれ、神の権威によって、人を滅びの世と死から救い出し、天に引き上げる神の力を宿した救世主は、イエス・キリストただひとりなのです。
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