マタイの福音書には、イエスが悪魔の試みを受けたことが書かれています。イエスは、御霊に導かれて試みの場に行かれたのです。
神は肉なる人の子の意識を、肉の思いから霊の思いに移し変えるために、悪魔の試みを許されます。倒すためではなく、新しい人に造り上げるためです。人の子の勝利を期待して、御霊は悪魔の試みをくぐらせます。
神は子として扱っておられるのです。神の子に相応しい者とするためです。試みはその人の心を調べます。調べる部分は、その人の弱い部分です。
イエスにも誘惑がありました。神の御子の力で生きること、神の御子である自分の栄光を現わすこと、人々が神の御子として迎えイエスが王となることです。
悪魔は、四十日断食したイエスに言いました。「あなたが神の子なら、この石がパンになるように、命じなさい。」空腹の状態での誘惑です。神の御子には、朝飯前の簡単な事です。人の子にとっては奇跡でも、神の御子にとっては奇跡ではありません。
神の御子はすべてをご自分の良いようにすることができます。世は御子が父とともに造られたものです。世の中で御子の力を使って生きることもできます。その力を持っておられました。しかし、御子が世に遣わされたのは、人の罪を赦す贖いの神の子羊となるためです。人に仕えられるために神の御子として来られたのではありません。人に仕えるために来られたのです。
人と同じようになって、肉体の弱さを味わい、肉体を持つ者の弱さを負うために来られました。神の御子の力を使うならば、人と同じでは無くなります。人の子として来られたのです。自分のために神の力を使う事は避けなければなりません。自分の持つ神の御子の力をご自分の欲望を満たすために使うことはされませんでした。
食欲という肉体人間の生きるための究極の欲望、本能的な欲求に、人の子イエスは打ち勝ちました。イエスは神の御子の立場ではなく、人の子として父なる神に生かしていただくことを選ばれました。自分自身で神の御子の力を行使するのではなくて、父に聞き従い父のことばの中に生きることを選ばれたのです。
イエスは答えられました。「『人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる』と書いてある。」
イエスは、申命記８：３を言われたのでした。「主は、あなたを苦しめ、飢えさせて、あなたも知らず、あなたの先祖達も知らなかったマナを食べさせられた。それは、人はパンだけで生きるのではない、人は主の口から出るすべてのもので生きる、ということを、あなたにわからせるためであった。」
イエスが群衆に言われた、「神の国とその義とをまず第一に求めなさい。そうすれば、それに加えて、あなたがたに必要なものはすべて与えられます」という、神を第一とする生き方を実践されたのです。
次に悪魔は、イエスを聖なる都に連れて行き、神殿の頂に立たせて、言った。「あなたが神の子なら、下に身を投げてみなさい。『神は御使い達に命じて、その手にあなたを支えさせ、あなたの足が石に打ち当たることのないようにされる。』と書いてありますから。」聖書のことばで悪魔の誘惑に勝利したイエスに、悪魔は聖書のことばで試みました。
神の御子に御使い達は仕えていました。天での栄光です。しかし、世に於いては人の子です。御使いよりも低い者となられました。肉体のない御使いは自由です。肉体の中にいる神の御子は不自由でした。御子は、世では人の子です。特別な油注がれた人の子であることは悪魔の知恵で現わすものではありません。神の方法で現されるのです。
イエスは言われた。「『あなたの神である主を試みてはならない』とも書いてある。」イエスは、神の方法で、神の時に栄光が現されることを知っておられます。イエスは神に従い、忍耐をもって神の時を待ち望まれるのです。
今度は悪魔は、イエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華を見せて、言った。「もしひれ伏して私を拝むなら、これを全部あなたに差し上げましょう。」イエスは王となられる方です。すべての国々を得るために悪魔と駆け引きをしなくても、神が与えられます。悪魔を拝んで得たならば、悪魔の支配下に入ることになり、神の御子は敗北することになります。敗北したイエスは贖いの神の子羊の働きを失い、人の罪は永遠に残ってしまいます。
イエスはきっぱりと言われた。「引き下がれ、サタン。『あなたの神である主を拝み、主にだけ仕えよ』と書いてある。」神によって遣わされたイエスは、神だけに従い、父のことばを語り、父の命じられることに従われたのです。世にあって、神の国の歩みをされました。
悪魔は、悪魔の言葉を退け神のことばに従うイエスを離れて行き、御使い達が近づいて来て仕えました。人の子イエスは、肉体を持ちながら、この世の君（悪魔）に従う肉の生き方ではなく、肉に死んで神のことばに従う生き方を全うして十字架にかかられ、任務を果たされました。
悪魔はその人の持つ弱さを知り、その人に相応しい誘惑を仕掛けて来ます。イエスは一度で退けましたが、私達は１００％人間ですから、何度も失敗します。でも、悔い改めると、何度でも神は赦してくださいます。自分の力では勝利できません。御霊の助けが必要です。
いつも失敗することは、その人の弱い部分なのです。御霊の助けを求めていないと、この世の方法で切り抜けようとしてしまいます。頭を打って、ようやく気づくほど、悪魔の方法は身近に置かれています。すぐそばに必要とするものを用意して誘惑して来ます。
神とともにいながら、簡単に悪魔の方法を取り入れてしまいます。忍耐しなくても、祈り込まなくても、容易く手に入れられるからです。本当に信仰の弱い者です。自我の強い者です。神の御手にへりくだるのに、自分を過信する不純な者です。神の恵みを侮る者です。また、自分なんてと過小評価して、神の栄光を見ようとしない不信仰な者です。
私には、神が必要です。神の御霊の導きをとらえられず、自分で判断して失敗します。助けてください、主よ。
