ふしぎないのち

神が働く不思議な体験

ロトの妻

 

 神は、汚れと暴虐に満ちたソドムの町を火で焼き尽くすおつもりで、ソドムの様子を調べさせるために主の使いを遣わされました。

 アブラハムは、彼らを迎え入れてもてなしました。彼らは、アブラハムに、「来年の今頃、アブラハムの妻サラに男の子ができている。」と告げました。

 

 すでに閉経した妻サラは九十歳になろうとしていました。神が約束されたアブラハムの子を得るのに痺れを切らしたサラは、夫アブラハムに女奴隷ハガルを与えて、女奴隷の子イシュマエルを得ていました。

 

 しかし、神は、約束どおり、妻サラにアブラハムの子イサクを与えられました。神のことばに偽りはありませんでした。人に遅いように思われても、神のことばの成就の時は訪れるのです。神が人に望まれるのは信仰です。約束のものを手に入れるのに必要なのは忍耐です。神のみことばを手放さないこと、これが信仰です。信仰によって、神は栄光を受けられます。

 

 主の使いの人々は、アブラハムのところを立って、ソドムの町を見下ろすほうへ上って行きました。アブラハムも彼らを見送るために、彼らといっしょに歩いていました。

 

 「主はこう考えられた。『わたしがしようとしていることを、アブラハムに隠しておくべきだろうか。』」(創世記18:17)

 

 主はアブラハムに、非常に悪いものとなったソドムの町を滅ぼすことを告げられました。ソドムの町には、アブラハムと一緒にカランから上って来た甥のロトが住んでいました。

 

 甥のロトがソドムの町とともに滅びることを痛むアブラハムは、主の使いたちに近づいて申し上げました。

 「『あなたは本当に、正しい者を、悪い者といっしょに滅ぼし尽くされるのですか。もしや、その町の中に五十人の正しい者がいるかもしれません。本当に滅ぼしてしまわれるのですか。その中にいる五十人の正しい者のために、その町をお赦しにならないのですか。

 正しい者を悪い者といっしょに殺し、そのため、正しい者と悪い者とが同じようになるというようなことを、あなたがなさるはずがありません。とてもあり得ないことです。全世界を裁くお方は、公義を行なうべきではありませんか。』

 主は答えられた。

 『もしソドムで、わたしが五十人の正しい者を町の中に見つけたら、その人たちのために、その町全部を赦そう。』

 アブラハムは答えて言った。

 『私は塵や灰にすぎませんが、あえて主に申し上げるのをお許しください。もしや五十人の正しい者に五人不足しているかもしれません。その五人のために、あなたは町の全部を滅ぼされるでしょうか。』

 主は仰せられた。

 『滅ぼすまい。もしそこにわたしが四十五人を見つけたら。』

 そこで、アブラハムは再び尋ねて申し上げた。『もしやそこに四十人見つかるかもしれません。』すると、主は仰せられた。『滅ぼすまい。その四十人のために。』

 またアブラハムは言った。『主よ。どうかお怒りにならないで、私に言わせてください。もしやそこに三十人見つかるかもしれません。』主は仰せられた。『滅ぼすまい。もしそこにわたしが三十人を見つけたら。』

 アブラハムは言った。『私があえて、主に申し上げるのをお許しください。もしやそこに二十人見つかるかもしれません。』すると、主は仰せられた。『滅ぼすまい。その二十人のために。』

 アブラハムはまた言った。『主よ。どうかお怒りにならないで、今一度だけ私に言わせてください。もしやそこに十人見つかるかもしれません。』すると主は仰せられた。『滅ぼすまい。その十人のために。』

 主はアブラハムと語り終えられると、去って行かれた。アブラハムは自分の家へ帰って行った。」(創世記18:23-33)

 

 アブラハムは、ソドムの町のために神に執り成しました。ソドムに十人の正しい者がいるならば、ソドムの町を滅ぼさない、と主はアブラハムに約束されました。

 

  「ふたりの御使いは、ロトに言った。

 『ほかにあなたの身内の者がここ(ソドム)にいますか。あなたの婿やあなたの息子、娘、あるいはこの町にいるあなたの身内の者をみな、この場所から連れ出しなさい。

 わたしたちはこの場所を滅ぼそうとしているからです。彼らに対する叫びが主の前で大きくなったので、主はこの町を滅ぼすために、わたしたちを遣わされたのです。』

 そこでロトは出て行き、娘たちをめとった婿たちに告げて言った。『立ってこの場所から出て行きなさい。主がこの町を滅ぼそうとしておられるから。』

 しかし、彼の婿たちには、それは冗談のように思われた。」(創世記19:12-14)

 

 ソドムの町に、神を信じる正しい人は、ロトとその家族だけでした。ロトには、嫁いだ娘がいました。しかし、その娘の夫は現実のことだと受け止められず、嫁いだ娘はその夫とともに滅びました。

 

 「夜が明ける頃、御使いたちはロトを促して言った。『さあ立って、あなたの妻と、ここにいるふたりの娘たちを連れて行きなさい。さもないと、あなたはこの町の咎のために滅ぼし尽くされてしまおう。』

 しかしロトはためらっていた。すると、その人たちは彼の手と彼の妻の手と、ふたりの娘の手をつかんだ。―主のロトに対する憐れみによる。そして彼らを連れ出し、町の外に置いた。

 彼らを外のほうに連れ出したとき、そのひとりは言った。『いのちがけで逃げなさい。うしろを振り返ってはいけない。この低地のどこででも立ち止まってはならない。山に逃げなさい。さもないと滅ぼされてしまう。』(創世記15-17)

 

 御使いは、嫁いだ娘の手は取りませんでした。彼女は、夫の権威の下にある者です。御使いは、ロトとロトの権威の下にある妻と娘の手をつかんで、町の外に連れ出しました。

 

 山に逃げ切ることができないと判断したロトが、逃れるのに近いあそこの小さな町ツォアルに逃げさせてくれるように頼むと、御使いは、「急いでそこへ逃れなさい。あなたがあそこに入るまでは、わたしは何もできないから。』と言いました。

 

 「太陽が地上に上った頃、ロトはツォアルに着いた。そのとき、主はソドムとゴモラの上に、硫黄の火を天の主のところから降らせ、これらの町々と低地全体と、その町々の住民と、その地の植物をみな滅ぼされた。

 ロトのうしろにいた彼の妻は、振り返ったので、塩の柱になってしまった。

 翌朝早く、アブラハムは、かつて主の前に立ったあの場所に行った。彼がソドムとゴモラのほう、それに低地の全地方を見おろすと、見よ、まるでかまどの煙のようにその地の煙が立ち上っていた。

 こうして、神が低地の町々を滅ぼされたとき、神はアブラハムを覚えておられた。それで、ロトが住んでいた町々を滅ぼされたとき、神はロトをその破壊の中から逃れさせた。(創世記19:23-29)

 

 御使いは、アブラハムに告げたとおり、ソドムとゴモラの町々を天の主のところから降らせた硫黄の火で焼き尽くしました。

 アブラハムは、ソドムとゴモラのほう、低地の全地方を見おろすと、焼き尽くされて煙が立ち上っているのを見ました。主の仰せられたとおりです。

 十人の正しい者がいれば、滅ぼすまいと仰せられた神は、アブラハムの執り成しによって、ロトの家族をその破壊の中から逃れさせられました。

 

 ソドムの町の外に連れ出されたのは、ロトとロトの妻と二人の娘の四人でした。しかし、ロトの妻は、御使いのことばに聞き従わず、うしろを振り返ったために、塩の柱となってしまいました。逃げ延びたのは、三人でした。

 

 このことは、まるで、世の終わりに起こる事のひな型のようです。

 

 ソドムの町の滅びから救われたのは、神を信じるしもべアブラハムの心を砕いた執り成しによって、神の憐れみを受けたロトとその家族です。

 

 御使いは、ロトに「あなたの身内の者をみな、この場所から連れ出しなさい。」と言っています。救いは神のしもべの祈りと、取り成されて憐れみを受けた人と、その家族にあるようです。

 

 これは、世の終わりの話です。異邦人の時の完成がなり、聖霊が取り去られて、ユダヤ人の時が起こります。

 

 ユダヤ人が宣教し、ユダヤ人が救われ、また、ユダヤ人と残された神の民が神に立ち返る時です。異邦人の時はすでに完成しました。異邦人がキリストの福音を聞いて救われる時は完成しているのです。

 

 残されたイエス・キリストを知る者たち(神の民)が、信仰に立ち返る時です。神のみことばにすがる時です。神から遠く離れて福音の外にいた異邦人ではありません。神のみことばを聞いていた割礼の無い神の民です。また、神の民に取り成されていた家族です。

 

 神は、悪魔の荒れ狂う世、反キリストが覇権を握る世界で、神のことばを語るユダヤ人たちを起こして世界中に福音を宣教し、神に立ち返る魂(神の民)を刈り取られます。

 

 ロトの妻は、この世に未練を残し、主の御使いが、「いのちがけで逃げなさい。うしろを振り返ってはいけない。この低地のどこででも立ち止まってはならない。山に逃げなさい。さもないと滅ぼされてしまう。」と命じたのに、うしろを振り返って、神に、塩の柱にされてしまったのです。

 

 御使いたちに、「さあ立って、あなたの妻と、ここにいるふたりの娘たちを連れて行きなさい。さもないと、あなたはこの町の咎のために滅ぼし尽くされてしまおう。」と促されても、ロトはためらっていました。すると、主の憐れみは、御使いたちにロトと妻と娘たちの手をつかませ、彼らを連れ出し、ソドムの町の外に置いたのでした。

 

 世の咎のために、世は滅ぼされます。しかし、神は聖徒たちの祈りを覚えておられます。アブラハムを覚えて、ロトをその破壊の中から逃れさせられた主が、聖徒たちの祈りを覚え、彼らの家族に憐れみをかけられます。

 

 ソドムの町の滅びの中から、救い出されたのは、神のしもべアブラハムの執り成しを受けていたロトとその家族でした。ロトの身内の者で、神のことばを信じてソドムの町の外に置かれたのは、ロトと妻とふたりの娘だけでした。

 神の御使いは、ロトの身内の者をみな招きましたが、信じた者は四人だけでした。

 

 神のことばを信じて、ロトとともにソドムの町の外に出た者のうち、妻はうしろを振り返って、塩の柱になってしまいました。彼女はいのちがけで逃げていなかったのです。彼女のいのちは、この世に置かれていたのです。

 

 ロトはいのちがけで逃げました。ふたりの娘たちもいのちがけで逃げました。彼らは、自分のいのちを救うだけです。神のみことばにすがり、自分で自分のいのちを救うだけです。

 

 神のみことばにすがるのに、いのちがけでなかったロトの妻は、塩の柱になり、神が用意された逃れの町に逃れることはありませんでした。