イエスが地上最後の過越しの食事を弟子たちとともにされました。
「パンを取り、感謝をささげてから、裂いて、弟子たちに与えて言われた。
『これは、あなたがたのために与える、わたしのからだです。わたしを覚えてこれを行ないなさい。』
食事の後、杯も同じようにして言われた。
『この杯は、あなたがたのために流されるわたしの血による新しい契約です。』」（ルカ２２：１９，２０）
イエスは弟子たちに、十字架の贖いのわざを覚えて守るべき聖餐の務めを命じられました。
その時は、弟子たちはイエスの十字架の死を理解していませんでした。しかし、イエスの処刑と墓からの甦りを体験した後の弟子たちは、イエスのことばを理解して、神の用意された、神の子羊イエスの罪の贖いのわざの記念として、パンと葡萄酒の聖餐の記念を守りました。
ユダヤ教の過越しの祭りの儀式において、一つの袋に入れられた三枚のマッツァ（種なしパン）の真中のマッツァを半分に割り、アフィコーメンと呼ばれるその半分を布にくるんで隠し、子どもたちに隠したアフィコーメンを見つけ出させます。
イエスは種を入れない種なしパンのアフィコーメンを「わたしのからだである。」と言われました。
古い律法から新しい律法に移行した新約聖書的にこの過越しのパンを理解するならば、三枚のマッツァは、三位一体の神（父なる神、子なる神、聖霊）の象徴のようです。
真中のマッツァは子なる神キリスト・イエスを表しており、子どもたちに見つけ出されるアフィコーメンは、肉を裂かれ布にくるまわれて墓に葬られた神の子羊イエスを表します。
神が遣わされたキリストは、幼子のような素直で純真な心の者でなければ、見出すことができません。
イエスは、過越しの前日に弟子たちと最後の過越しの食事をされました。そして、肉を裂かれ十字架につけられて、罪の贖いの血を流す、神の子羊イエスの贖いのわざを覚えて、パンと葡萄酒の聖餐を行なうように言われたのでした。
出エジプトから現在に至るまで、出エジプトを記念する過越しの祭りを、神に命じられたまま祝い続けているユダヤ人。ユダヤ人たちは、奴隷の家エジプトから救い出された神の偉大なわざを記念し、イスラエルとともにおられる神を喜び楽しみます。
イエスは、その過越しの祭りに隠された、もう一つの偉大な過越しを明らかにされました。奴隷の家エジプトから救い出された過越しの祭りの中に、神がイスラエルに遣わすと約束されたキリストによる、罪の世から救い出す神の子羊の血の契約が隠されていたのです。
イエスは、葡萄酒を、「あなたがた（イスラエル）のために流されるわたし（神の子羊イエス）の血による新しい契約です。」と言われました。
神がイスラエルにお与えになる新しい契約は、神が天から遣わされた神の子羊（神のひとり子イエス）の十字架の死と、流される罪の贖いの子羊イエスの血により、永遠の死から救い出すという契約です。
奴隷の家エジプトからの救いを実現された神が、罪の奴隷の世の裁きを過越され世の滅びから救い出して、永遠のいのちを得させるとされる新しい契約です。
神は、奴隷の家エジプトから救い出されたイスラエルに、神の律法を与え、神の民とされました。
神は、神のひとり子キリストにおいて、契約を破棄し、新しい契約をお与えになりました。それは、地球上における約束ではありません。エジプトから救い出してカナンの地に導き上られた、地につく契約ではないのです。
新しい契約は、世から救い出して天の御国に入らせるという、霊的な契約です。霊的な契約には、文字の律法は無効です。新しい律法が必要です。
神が新しい契約に用意された、新しい律法は、三枚目のマッツァ、聖霊によるものです。神は、アフィコーメンのキリスト（肉が裂かれた子羊イエス）の十字架のわざによって罪を赦し、子羊イエス・キリストを三日目に墓から甦らせ、天に引き上げられました。
天に上げられたキリストは、聖霊のバプテスマを授ける権威を父なる神から受けて、キリストを信じる弟子（幼子のように純真な者）たちに、聖霊を授けられます。
聖霊は御霊となって、ひとりひとりのうちにお住まいになられます。内住の御霊は、イエスのことばを思い起こさせ、真理を教え、いのちの道へと導かれます。
神は、御霊によって、イエス・キリストを信じる者の心に律法を書き記し、良心をきよめて死んだ行ないから離れさせ、生ける神に仕える者として、新しく造り変えてくださるのです。
新しい契約によって与えられる新しい律法は、生かす御霊です。新しい契約を受ける者は、生かす御霊によって、永遠のいのちを得る者に造り変えられるのです。
新しい契約（神の御子イエス・キリストを信じる）に入っても、新しい律法を受け取る者は多くありません。文字の律法によって、新しい契約を完成しようとします。
御霊に教えられない人々は、十字架で死なれたイエスを悼み、罪の赦しを請います。罪が贖われたことが信じられないのです。何度も何度も悔い改め、うなだれます。
イエスが墓の中に閉じ込められているかのように、悲壮です。
イエスが十字架につけられたのは、過越しの祭りで羊が葬られる日でした。次の日が安息日であったので、その日のうちに墓に納められました。
安息日の翌日、すなわち、三日目に、イエスとともにいた女たちが、墓の中のイエスのからだに油を塗ろうとして、朝早く墓にやって来ました。
「見ると、石が墓からわきにころがしてあった。入って見ると、主イエスのからだはなかった。そのため女たちが途方に暮れていると、見よ、まばゆいばかりの衣を着たふたりの人が、女たちの近くに来た。
恐ろしくなって、地面に顔を伏せていると、その人たちはこう言った。
『あなたがたは、なぜ生きている方を死人の中で捜すのですか。ここにはおられません。甦られたのです。まだガリラヤにおられたころ、お話しになったことを思い出しなさい。
人の子（キリスト）は必ず罪人らの手に引き渡され、十字架につけられ、三日目に甦られなければならない、と言われたでしょう。』
女たちはイエスのみことばを思い出した。そして、墓から戻って、十一人弟子とそのほかの人たち全部に、一部始終を報告した。」（ルカ２４：２－９）
ところが使徒たちにはこの話はたわごとと思われたので、彼らは女たちを信用しなかった（ルカ２４：１１）、とあります。
その後、復活のイエスが弟子たちに現われたので、イエスを見て、弟子たちは信じました。そこに、十二弟子のひとりで、デドモと呼ばれるトマスはいませんでした。
ほかの弟子たちがトマスに「私たちは主を見た。」と言うと、トマスは彼らに「私は、その手に釘の跡を見、私の指を釘のところに差し入れ、また私の手をその脇に差し入れてみなければ、決して信じません。」と言いました。
イエスは、トマスにも現われ、「あなたの指をここにつけて、わたしの手を見なさい。手を伸ばして、わたしの脇に差し入れなさい。信じない者にならないで、信じる者になりなさい。」と言われました。
「トマスは答えてイエスに言った。『私の主。私の神。』
イエスはトマスに言われた。
『あなたはわたしを見たから信じたのですか。見ずに信じる者は幸いです。』」（ヨハネ２０：２８，２９）
見ずに信じる者は信仰の証です。信仰は神に喜ばれます。ノアも、アブラハムも、信仰によって義とされたのです。
イエスの弟子たちも、見ずに信じることができませんでした。まだ、御霊を受けていなかったからです。
イエスを信じていた人々は、十字架で死なれて墓に納められたイエスを思い、落胆していました。
しかし、御使いは言いました。「あなたがたは、なぜ生きている方を死人の中で捜すのですか。墓にはおられません。甦られたのです。」
教会の賛美にこのような歌があります。
甦られたハレルヤ 甦られた我が主
死に打ち勝ちてハレルヤ まもなく帰られるイエス
十字架につけられ私たちの罪の身代わりに死なれたイエスはよく知られ、人々は心に悲しみと痛みをもってイエスを思い出します。
しかし、イエスは甦られたのです。墓にはおられません。生きておられるのです。死人の中にはおられません。死に勝利して、天の神の御座の右に着座しておられるのです。
イエスは四十日の間、弟子たちに現われ、イエスが指示されたガリラヤの山で使徒たちがイエスを礼拝すると、エルサレムで聖霊のバプテスマが授けられることを告げられて、イエスは、使徒たちが見ている間に上げられ、雲に包まれて、見えなくなられました。
そして、弟子たちがエルサレムの一つの所に集まって、約束の聖霊（真理の御霊）を待ち望んでいると、聖霊が注がれて、みなが聖霊に満たされました。
聖霊が宿られると、イエスの復活を大胆に語り、復活のキリスト（永遠に生きておられる神の御子キリスト）の福音を宣べ伝える者となりました。
私たちが信じる救世主イエス・キリストは、死から甦られ、いと高き所におられます。私たちは死人の中にキリストを捜しません。墓にはおられないからです。
復活のキリストを信じる私たちは、十字架を慕います。それは、罪を赦し、死と滅びから救い出し、永遠のいのちを得させる、キリストの愛を見るからです。
十字架は悲しみではなく、救いの喜びであり、言い表わすことのできない感謝なのです。
私たちの主キリストは、いと高き所、神の御座の右に着座しておられます。顔を上げて、主を見上げ、神のみわざをほめたたえ、キリストに喜びをささげましょう。そして、神がキリストによってお与えになられた御霊により頼んで、信仰によって歩んでまいりましょう。
