モーセはイスラエルに言いました。
「あなたがた(ユダヤ人)の神、主(イスラエルの神)が、エジプトにおいてあなたの目の前で、あなたがたのためになさったように、試みと、しるしと、不思議と、戦いと、力強い御手と、伸べられた腕と、恐ろしい力とをもって、一つの国民を他の国民の中から取って、あえて御自身のものとされた神があったであろうか。
あなたにこのことが示されたのは、主だけが神であって、ほかには神はないことを、あなたが知るためであった。」(申命記4:34,35)
イスラエル(ユダヤ民族)は、四百年の間、エジプト人に苦役を強いられたエジプトの奴隷でした。
神は、ヤコブ(ユダヤ民族の父)がエジプトに下るとき、夜の幻の中で、イスラエル(ヤコブ)に仰せられました。
「わたしは神、あなたの父(イサク)の神である。エジプトに下ることを恐れるな。わたしはそこで、あなたを大いなる国民にするから。
わたし自身があなたといっしょにエジプトに下り、また、わたし自身が必ずあなた(イスラエル)を再び導き上る。ヨセフの手はあなたの目を閉じてくれるであろう。」(創世記46:3,4)
ヤコブは、生まれ故郷(祖父アブラハム、また、父イサクが住んでいたカナンの地)から、エジプトに下ることを恐れていました。
カナンの地は、神が先祖に所有地として与えると約束された土地です。飢饉だからと言って約束の地を離れて良いものでしょうか。
父イサクの時代、カナンの地に飢饉がありました。そのとき、主(アブラハムと契約を結びアブラハムが聞き従い通した神)は、イサクに現われて仰せられました。
「エジプトへは下るな。わたしがあなたに示す地に住みなさい。
あなたはこの地に滞在しなさい。わたしはあなたとともにいて、あなたを祝福しよう。それはわたしが、これらの国々をすべて、あなたとあなたの子孫に与えるからだ。こうしてわたしは、あなたの父アブラハムに誓った誓いを果たすのだ。
そしてわたしは、あなたの子孫を空の星のように増し加え、あなたの子孫に、これらの国々をみな与えよう。こうして地のすべての国々は、あなたの子孫によって祝福される。
これはアブラハムがわたしの声に聞き従い、わたしの戒めと命令と掟と教えを守ったからである。」(創世記26:2ー5)
ヤコブの父イサクの時代の飢饉のときに、神はイサクに、「エジプトに下ってはならない。この地に滞在しなさい。わたしがこれらの国々をすべて、あなたとあなたの子孫に与えるからだ。」と仰せられていたのです。そして、イサクが約束に地に住むことで、地のすべての国々は、神に祝福されるのです。
イサクとイサクの子孫にこれらの国々(カナンの地)をみな与えるという誓いは、イサクの父アブラハムが神の声に聞き従い、神の戒めと命令と掟を守ったからである、と主は仰せられました。
与えられるのは、一つの国だけではありません。ケニ人、ケナズ人、カデモニ人、ヘテ人、ペリジ人、レファイム人、エモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の住む国々をみな、イスラエルに与えると言われたのでした。(創世記15:19-21)
すでに住民がいる国々を、神がイスラエルに与えると誓われました。天にあるものも地にあるものもすべて、創造主であられる神のものです。神が御心のままにすべての民族を動かされる主権者なのです。与えるのも、取り去るのも、世界を統べ治められる神によるのです。
そして、神に聞き従い通したアブラハムゆえに、アブラハムの子イサクもイサクの子孫も、アブラハムにお与えになった神の契約と祝福の中に置かれているのです。
神は、イサクとイサクの子孫(イスラエル)にカナンの地を与えることで、彼らの父祖アブラハムに誓った誓いを果たされます。神は、契約に忠実な神であられます。
土地(カナンの地)をイスラエルが所有することについて、モーセは言っています。
「主は、あなたの先祖たちを愛して、その後の子孫(イスラエル)を選んでおられたので、主御自身が大いなる力をもって、あなたをエジプトから連れ出された。
それはあなたよりも大きく、強い国々を、あなたの前から追い払い、あなたを彼らの地に入らせ、これを相続地としてあなたに与えるためであった。今日のとおりである。」(申命記4:37,38)
神の中では、後にも先にも、カナンの地は、イスラエルのものです。神がアブラハムに、約束の地はイサクの子孫に与えると誓っておられたからです。
それを覆す者は、神の御心に背く者、反逆者です。神の忠実な誓いを無にする者、神のことばの実現を阻害する神の敵対者、滅びの子です。
神は、アブラハムに誓われたことを、アブラハムの子孫イスラエルに実現することで、神の契約の確かなことと御自身の誠実と聖なる神の栄光を現わされるのです。
イスラエルは、四百年の間、エジプトの奴隷でした。
主は、ユダヤ民族の目の前で、モーセを通して、数々の試み(十の災い)としるしと不思議と、神の御力とをもって、一つの国民(イスラエル)を他の国民(エジプト)の中から取って、御自身のものとされました。
世の人間(エジプト人)の奴隷であったユダヤ民族を、奴隷の家エジプトから連れ上らせて、神の奴隷とされました。
神は、エジプトから連れ出したユダヤ民族と契約を結び、神がお与えになった神の律法と命令と掟に聞き従い、神に仕える神の民イスラエルとされたのでした。
神は、イスラエルを先祖の地(カナンの地)に導き上り、滅ぼされるにふさわしく悪い者(神に背く者)となっていたその地の住民たちを追い散らされたのでした。
アブラハムの子孫イスラエルは、神がアブラハムに誓われた誓いの通り、カナンの地を勝ち取って相続したのでした。
先祖(アブラハム、イサク)の眠るカナンの地から離れることを恐れたヤコブ(イスラエル)に、神は、神御自身がヤコブとともにエジプトに下り、そこで大いなる国民とし、神御自身が必ずイスラエルを再びエジプトの地から導き上り、カナンの地に戻って来ることを告げられました。
神は、ヤコブに仰せられたことを成し遂げられました。ヤコブ自身は、エジプトの地で息絶え、エジプトの大臣となっていた息子ヨセフにより荘厳な葬儀が行われて、カナンの地にある先祖の墓(アブラハムと妻、イサクと妻、ヤコブの妻が眠る墓)に葬られました。
アブラハムと契約を結ばれた神は永遠に生きておられ、四千年後の子孫イスラエルが今もアブラハムの契約を覚えていて、カナンの地を相続するために戦っているイスラエルのその信仰をご覧になって、イスラエルを選んだことに満足しておられることでしょう。
そして、ヤコブ(イスラエル)に噛みついた蛇(悪魔)に、「おまえはわたしのしもべイスラエルに心を留めたか。イスラエルのように信仰から離れず潔白で、アブラハムの契約の神を恐れ、神の契約の実現によってわたし(神)の栄光を現わす民族がほかにあろうか。」と自慢しておられるでしょう。