ふしぎないのち

神が働く不思議な体験

罪によって生まれる敵

 

 神のことばを信じたアブラムは、神に従って、カランを出てカナンの地に入りました。神は、甥のロトと別れたアブラムに仰せられました。

 「さあ、目を上げて、あなたがいる所から北と南、東と西を見渡しなさい。わたしは、あなたが見渡しているこの地全部を、永久にあなたとあなたの子孫とに与えよう。わたしは、あなたの子孫を塵のようにならせる。もし人が地の塵を数えることができれば、あなたの子孫をも数えることができよう。」(創世記13:14-16)

 

 しかし、老齢のアブラムには子どもがいませんでした。老齢の妻サライは不妊の女です。子どものいないアブラムの祝福を受け継ぐのは誰でしょう。

 

 「アブラムは、主に申し上げました。

 『ご覧ください。あなたが子孫を私に下さらないので、私の家の奴隷が、私の跡取りになるでしょう。』

 すると、主のことばがアブラムに臨み、こう仰せられた。

 『その者があなたの跡を継いではならない。ただ、あなた自身から生まれ出て来る者が、あなたの跡を継がなければならない。』」(創世記15:3、4)

 

 神は、はっきりと、アブラムの血を引く子孫を与えると仰せられたのでした。そして、アブラムの子孫がアブラムに与えた土地を所有すると仰せられました。

 神は、アブラムと血の契約を結ばれました。真二つに切り裂いた三歳の雌牛と、三歳の雌やぎと、三歳の雄羊の血が流されました。土地と子孫、これらの約束を確かなものとする契約です。

 

 老齢の妻サライは閉経しました。妊娠の可能性は失われたのです。アブラムの血を引く子どもはどこから出て来るのでしょう。アブラムもサライも、無から有を生じる神に出会っていませんでした。神のことばを信じたアブラムですが、神のことばの実現のために、自分の知恵も必要だと考える、この世の常識を兼ね備えた人でした。

 

 閉経し妊娠の可能性を失った老齢の妻サライは、自分の女奴隷ハガルを夫アブラムに与え、ハガルによってアブラムの子どもの母になろうと考えました。そのことが実行され、エジプト人の女ハガルに、アブラムの子イシュマエルが生まれました。

 

 イシュマエルが生まれて十三年経った頃、主はアブラムに現われて、主が与えると言われた子孫のために、アブラムと契約を結ばれました。主は、アブラムをアブラハムと改名されて、契約を結ばれました。

 

 神は、改名されたアブラハムに、アブラハムの子孫の守るべき契約として、すべての男子は割礼を受けることを命じられました。

 アブラハムが包皮の肉を切り捨てられたときは、九十九歳でした。アブラム(契約以前のアブラハム)の子イシュマエルは、成人した十三歳で包皮の肉を切り捨てられました。

 

 エジプト人の女奴隷ハガルの子イシュマエルは、父アブラムのからだの外にいて、アブラハムと並んで割礼を受けたのでした。アブラムの子イシュマエルは、アブラハムの契約を受け継ぐ者ではなくて、アブラハムの契約を立証する者でした。

 

 主は、妻サライをサラと改名されました。神は、アブラハムに約束の子孫をお与えになる前に、アブラムを「国々の父(アブラハム)」と呼び、サラを「国々の母(サラ)」と呼ばれたのでした。

 

 主はアブラハムに仰せられました。

 「あなた(アブラハム)の妻サラがあなたに男の子を産むのだ。あなたはその子をイサクと名づけなさい。わたしは彼とわたしの契約を立て、それをイサクの後の子孫のために永遠の契約とする。

 わたしは、来年の今頃サラがあなたに産むイサクと、わたしの契約を立てる。」(創世記17:19,21)

 

 主は、妻サラの子どもの産まれる時期を定め、名前も御自分でイサクと命名されました。イサクがサラの胎内にかたち造られる前に、神は、アブラハムに仰せられたのです。

 

 アブラハムが割礼を受けた後に、閉経した妻サラに男の子が宿りました。その子の名前はイサク。イサクは、「国々の父」と呼ばれる父アブラハムと、「国々の母」と呼ばれる母サラの子どもとして生まれた契約の子どもでした。神の契約のしるしである割礼のあるアブラハムを父とする、神の契約と祝福が約束された子孫でした。

 

 サラは夫アブラハムに言いました。「このはしため(女奴隷ハガル)を、その子(イシュマエル)といっしょに追い出してください。このはしための子は、私の子イサクといっしょに跡取りになるべきではありません。」

 アブラハムは、自分の子に関することなので、非常に悩みました。

 

 「すると、神はアブラハムに仰せられた。

 『その少年(イシュマエル)と、あなたのはしため(ハガル)のことで、悩んではならない。サラがあなたに言うことはみな、言うとおりに聞き入れなさい。イサクから出る者が、あなたの子孫(アブラハムの子孫)と呼ばれるからだ。

 しかしはしための子も、わたしは一つの国民としよう。彼(イシュマエル)もあなた(アブラム)の子だから。』」(創世記21:12,13)

 

 イシュマエルの子孫は、アラブ人と呼ばれ、多くの国々を所有しています。彼らは、アブラムの血肉の子孫です。

 

 アブラハムの子孫、契約の子イサクに、双子の男の子が生まれました。弟ヤコブが神と戦って神から祝福を勝ち取り、アブラハムの契約と祝福を受け継ぎました。

 父イサクの契約と祝福を取り逃した兄エサウは、カナンの地にいる割礼のない民ヘテ人の娘を妻にしました。カナンの娘たちが父イサクの気に入らないのに気づいたエサウは、伯父(父イサクの義母兄弟)イシュマエルのところに行き、イシュマエルの娘を妻としてめとりました。

 

 父イサクが相続した神の契約と祝福を受け継いだ弟ヤコブを憎み、殺意を持つ兄エサウは、アブラハムの契約と祝福を相続したイサクを憎む伯父イシュマエルの娘をめとり、イシュマエルとひとつとなっていきます。

 

 兄エサウの憤りから身を避けるため、ヤコブは、母リベカの兄ラバンのもとに身を寄せ、伯父ラバンの娘を妻としました。

 イサクは、父アブラハムの兄弟の娘リベカを妻としています。イサクの子ヤコブは、母リベカの兄の娘らを妻としました。イサクもヤコブも、アブラハムの親族から妻を得たのでした。

 

 こうして、アブラハムに与えられた神の契約は、サラの子イサクに、また、リベカの子ヤコブに受け継がれたのです。アブラハムもサラもテラの子どもです。イサクの妻リベカもヤコブの妻もアブラハムの親族であり、テラの子孫です。神の契約を相続するアブラハムの子孫は、テラの子どもたちによって造られました。それゆえ、創世記11:27-30に、テラの歴史が書き記されています。

 

 「アブラハムの子孫」と呼ばれるのは、ヤコブの子らです。つまり、ユダヤ民族であり、イスラエル民族です。

 

 アブラムとサライは不安定な信仰(不信仰)によって、アブラムとエジプト人の女奴隷ハガルの子イシュマエルを設けました。

 

 アブラハムとサラの子イサクは、神の御心(兄が弟に仕える)を悟らず、自分の思うまま長子のエサウに祝福を相続させようとしたため、イサクの愛する長子エサウを、神がお定めになった相続者である(神の契約を相続する)弟ヤコブに敵対する者としました。

 

 イシュマエルにはエジプト人の血が流れています。ヤコブ(イスラエル)の子ら(ユダヤ民族)を奴隷として苦しめたのは、エジプトでした。イシュマエルの中には、ヤコブを憎み、ヤコブを支配したい、ヤコブの上に立ちたいという欲望があります。

 

 ヤコブを憎むエサウの殺意は、エサウと血縁関係を持つイシュマエルの中に入りました。

 

 神がアブラハムに、「あなたの子孫」と仰せられたヤコブ(イスラエル)は、アブラムの不信仰の罪によって生まれたイシュマエル、また、神に尋ね求めないイサクの罪によって生まれたエサウの殺意によって苦しめられています。

 

 ヤコブは、先祖の祝福とともに、先祖の呪いもともに受け取っているのです。先祖の信仰とともに、先祖の罪も受け取っているのです。

 

 イスラエルは、先祖の罪によって生まれた敵に、いつも苦しめられています。そして、彼ら自身もまた、不信仰の罪(神が遣わされたダビデの子、神の子羊イエスがキリストであることを信じない罪)によって神とひとつとなっていません。

 ユダヤ人の王イエス・キリストは、先祖の罪の呪いを身に負って、イスラエルを、罪から解放するために来られました。主キリストに心を向け、信仰を向けるならば、イスラエルは救われます。

 

 イスラエルの敵は、神のひとり子イエス・キリストの敵です。イエス・キリストの敵は、御救いの契約のない暗闇の子らです。