ふしぎないのち

神が働く不思議な体験

預言者ヨナ①


  アッシリアは、イスラエルに敵対する、イスラエルの敵国でした。後には、イスラエルの十部族、北王国イスラエルを捕囚した国です。アッシリアに、ニネべという都市がありました。

  ユダヤ人のヨナに、主のことばがありました。「立って、あの大きな町ニネべに行き、これに向かって叫べ。彼らの悪がわたしの前に上って来たからだ。」

  預言者は、イスラエルを神に仕えさせるために、神のことばを王と民に語る者でした。イスラエルの神は、常にイスラエルとともにあり、エジプトを出て荒野を行きカナンの地に入り、イスラエルと共に敵国と戦い、イスラエルに勝利をおさめさせていました。

  イスラエルの神が、ご自分の民であるヨナに、民を脅かす敵国のニネべに行き、神の救いのことばを伝えるように、と命じられたのです。

  ユダヤ人にとっては、あってはならない事です。ヨナは旅立ちました。しかし、港でニネべとは逆方向の船に乗って、主のことばに逆らいました。

  主が大風を海に吹き付けたので、海に激しい暴風が起こり、船は難破しそうになりました。水夫達は恐れ、各々自分の神に向かって叫び、船を軽くしようと船の積荷を海に投げ捨てました。


  皆は互いに言いました。「くじを引いて、誰のせいで、この災いが私達に降りかかったかを知ろう。」そのくじは、ヨナに当たりました。

  海は、ますます荒れ狂います。くじに当たったヨナが、海と陸を造られた天の神から逃れている事を知った彼らは、「海が静まるために、私達はあなたをどうしたらいいのか」と尋ねました。

  「私を捕らえて、海に投げ込みなさい。そうすれば、海は静かになるでしょう。この激しい暴風は、私の背きの罪のために襲ったのです。」

  彼らは、天地創造の主に願って言いました。「ああ、主よ。どうか、この男の命のために、私達を滅ぼさないで下さい。罪の無い者の血を私達に報いないで下さい。主よ。あなたは御心にかなった事をなさるからです。」

  こうして、彼らは、生ける神の民ヨナを海に投げ込む事を恐れつつも、ますます荒れ狂う海に、ヨナをかかえて投げ込みました。

  すると、すぐさま海は激しい怒りをやめて静かになりました。人々は非常に主を畏れ、主に生贄を献げ、誓願を立てました。

  主は大きな魚を備えて、ヨナを飲み込ませました。ヨナは三日三晩、魚の腹の中にいました。ヨナは魚の腹の中で、神を賛美し続けました。

  主は、魚に命じ、ヨナを陸地に吐き出させました。再びヨナに主のことばがありました。「立って、あの大きな町ニネべに行き、わたしがあなたに告げることばを伝えよ。」

  ヨナは、主のことば通りに、立って(いやいやながらではなく、主に従って)ニネべに行きました。ニネべは、行き巡るのに三日かかるほどの非常に大きな町でした。

  ヨナは、ニネべの町に入ると、一日中歩き回って叫びました。「もう四十日すると、ニネべは滅ぼされる。」

  ニネべの人々は神を信じ、断食を呼びかけ、身分の高い者から低い者まで荒布を着て、悔い改めました。この事が、ニネべの王の耳に入ると、彼は王座から立って、王服を脱ぎ、荒布をまとい、灰の中に座って神の前に悔い改め、ニネべに次のような布告を出しました。

  「人も、獣も、牛も、羊もみな、何も味わってはならない。草をはんだり、水を飲んだりしてはならない。人も家畜も、荒布を見にまとい、ひたすら神にお願いし、各々悪の道と、暴虐な行いとを悔い改めよ。もしかすると、神が思い直して憐れみ、その燃える怒りを収め、私達は滅びないで済むかも知れない。」

  神は、彼らが悪の道から立ち返るために努力している事をご覧になって、彼らに下すといっておられた災いを思い直して、そうされませんでした。

  ところが、このことはヨナを非常に不愉快にさせました。「私は、あなたが情け深く憐れみ深い神であり、怒るのに遅く、恵み豊かであり、災いを思い直される事を知っていました。だから、私はあなたから逃れたのです。」

  強い日差しの中、ヨナを覆うように一本のとうごまを生えさせて、彼の頭の上の陰として、ヨナの不機嫌を直そうとされました。ヨナは、そのとうごまを非常に喜びました。

  しかし、神は、翌日の夜明けに、一匹の虫を備え、その虫がとうごまを噛んだので、とうごまは枯れました。太陽がヨナの頭を照りつけたので、彼は衰え果てて、死を願いました。

  主はいわれました。「あなたは、自分で骨折らず、育てもせず、一夜で生え、一夜で滅びたこのとうごまを惜しんでいる。まして、わたしは、この大きな町ニネべを惜しまないでいられようか。そこには、右も左もわきまえない十二万以上の人間と、数多くの家畜とがいるではないか。」

  
  神の民ではない異邦人に神のことばを伝える事は、イスラエルの預言者として、尊ばれる事ではなかったでしょう。

  神の命令に背くヨナを、神は退けるのではなくて、魚の腹の中に入れて運ばせ、目的地に赴かせました。神は、別の預言者を立てる事も出来ました。しかし、この働きはヨナに与えておられたのです。他の預言者ではなく、ヨナでした。

  ヨナの不従順の歩みの中で、神はヨナが乗った船の人々にご自身を現わされました。神の人ヨナを懲らしめる事で、彼らは生きて働く天の神を知り、偉大な御力でエジプトから連れ出したイスラエルの神を礼拝し、誓願を立てる者とされました。

  のちに、海に投げ込んだはずのイスラエルの預言者がニネべで神のことばを告げ、その事によってニネべの町が悔い改めたという噂を聞いた彼らは、ますます天の神を畏れた事でしょう。



  神は、エジプトはわたしのもの、アッシリアもわたしのもの、といわれます。神は、おひとりで、すべてのものを造られました。

  エジプトもアッシリアも、イスラエルを懲らしめ、よく練り、純真で良いものとするために無くてはならない存在なのです。