ふしぎないのち

神が働く不思議な体験

神の視点

 

 ヨセフは夢を見ました。父、母、兄弟が自分を伏し拝むという夢です。

 兄たちは怒りました。父ヤコブはヨセフを叱って言いました。「おまえの見た夢は、いったい何なのだ。私や、おまえの母上、兄さんたちが、おまえのところに進み出て、地に伏しておまえを拝むとでも言うのか。」(創世記37:10)

 兄たちはヨセフを妬みましたが、父ヤコブはこのことを心に留めました。

 

 ヤコブの妻レアの長子(十二人兄弟の長男)ルベンは、父のそばめビルハ(ヤコブの妻となった妻レアの妹ラケルの女奴隷)のところに行って、これと寝た。長子ルベンは父の寝床を汚したのです。それで、父ヤコブと神は、ルベンから長子の権利をはぎ取り、ヤコブの愛する妻ラケルの長子(ヤコブの十一番目の息子ヨセフ)に長子の権利を与えました。

 

 十一番目の息子でありながら、ヨセフは、十二人兄弟の長子となりました。長子の権利が与えられたヨセフに、父ヤコブは、長子の着るそでつきの長服を作ってやりました。ヨセフは、兄たちにとって長子となり、兄たちはヨセフの弟のような存在となったのです。長子の長服を着るヨセフが、兄たちが自分に伏し拝むという夢を見たというのです。なんと、兄たちの心を逆なでする夢でしょうか。兄たちのヨセフに対する妬みは憎しみに変わりました。

 

 父ヤコブの言いつけで、ヨセフは野で父の羊の群れを飼っている兄たちのところに向かうと、兄たちははるかかなたに、ヨセフを見て、互いに言いました。

 「見ろ。あの夢見る者がやって来る。さあ、今こそ彼を殺し、どこかの穴に投げ込んで、悪い獣が食い殺したと言おう。そして、あれの夢がどうなるかを見ようではないか。」(創世記37:19,20)

 

 長男のルベンが「血を流してはならない。」と引き留めました。それで、兄たちはヨセフのそでつきの長服をはぎ取り、ヨセフを穴の中に投げ込みました。そこに、ミデヤン人の商人が通りかかりました。ルベンの離れている間に、ヨセフを殺そうと企む兄たちの間で、ユダが兄弟たちに言いました。「弟を殺し、その血を隠したとて、何の益になろう。さあ、ヨセフをイシュマエル人に売ろう。」

 

 兄弟たちは、ヨセフを銀二十枚でイシュマエル人に売りました。イシュマエル人はヨセフをエジプトへ連れて行き、エジプトの王パロ(ファラオ)の廷臣、その侍従長ポティファルにヨセフを売りました。

 

 兄弟たちは、ヨセフの長服を屠った雄やぎの血に浸して父ヤコブのもとに持って行きました。父ヤコブは、ヨセフは悪い獣にかみ殺されたと言って、泣き悲しみました。

 

 一方、神はエジプト人ポティファルの奴隷となったヨセフとともにおられ、ヨセフを祝福されました。主は、ヨセフのすることすべてを成功させてくださいました。それでヨセフは主人にことのほか愛され、主人はヨセフを側近の者とし、主人の家を管理させ、彼の全財産をヨセフの手にゆだねました。

 しかし、主人の妻がヨセフに言い寄り、ヨセフが逃げると、主人に、ヨセフが自分にいたずらしようとしたと嘘を告げました。妻の話を聞いて主人は怒り、ヨセフを王の囚人が監禁されている監獄に入れました。

 主はヨセフとともにおられ、監獄の長の心にかなうようにされました。それで監獄の長は、その監獄にいるすべての囚人をヨセフの手にゆだねました。主がヨセフとともにおられ、ヨセフが何をしても、主がそれを成功させてくださいました。

 

 パロの献酌官長と調理官長がヨセフのいる監獄に入れられ、ふたりは夢を見ました。夢の意味がわからず、ふたりともいらいらしていると、ヨセフがふたりの夢を解き明かしました。ヨセフは、主から夢の解き明かしの賜物をいただいていたのです。

 ヨセフが解き明かしたとおり、献酌官長はもとの任務に戻され、調理官長は処刑されました。

 

 時が経って、ファラオが夢を見て心騒がし、その解き明かしのためにエジプトのすべての呪法師とすべての知恵ある者たちを呼び寄せましたが、夢の解き明かしのできる者はいませんでした。その時、献酌官長は、監獄のヨセフを思い出し、ファラオに告げました。ファラオは使いをやってヨセフを呼び寄せると、ヨセフはファラオの夢を主の知恵によって解き明かしました。

 

 ヨセフは、ファラオの夢を解き明かして、これからエジプトに起こる七年間の豊作と七年間の飢饉が神に定められており、豊作の七年間にすべての食糧を集めさせ、ファラオの権威のもとに、町々に穀物を蓄え、保管し、エジプトの地に、備えをするように。その食糧はエジプトの国に起こる七年の飢饉のための、国の蓄えとし、エジプトの地が飢饉で滅びないように、と助言しました。

 

 ファラオは、「神がこれらすべてのことをあなたに知らされたのであれば、あなたのようにさとくて知恵のある者はほかにいない。あなたは私の家を治めてくれ。私の民はみな、あなたの命令に従おう。私があなたにまさっているのは王位だけだ。さあ、私はあなたにエジプト全土を支配させよう。」と言って、ヨセフをエジプトの大臣としました。

 

 兄弟たちに、奴隷商人に売られたヨセフは、エジプト人の奴隷となり、主がともにおられたので、ヨセフは、主人の家と全財産を管理する側近となりました。

 奴隷から主人の側近となったヨセフは、監獄に入れられる囚人となりました。主がともにおられたので、ヨセフは、監獄の長の心にかない、監獄の管理をゆだねられました。

 監獄の管理を任されたヨセフは、主にいただいた夢の解き明かしの賜物によって、王の前に出て、王の夢を解き明かし、王に神の知恵が認められてエジプトの大臣となったのでした。

 

 ヨセフの解き明かしどおり、七年間の豊作のうちに食糧を蓄えたエジプトは、周囲の外国の人々も食糧を求めてエジプトにやって来ました。飢饉は全世界にひどくなったのです。

 

 この飢饉の七年の間に、穀物を買うためにエジプト人は、すべての銀と家畜と農地を穀物と引き換えました。また、世界中が穀物を買うために、エジプトのヨセフのところに来ました。こうして、エジプト中の銀も家畜も農地もファラオのものとなり、世界中の銀がエジプトの王のものとなりました。

 

 こうして、エジプトは、ヨセフの神によって、世界に類を見ない大国となったのです。世界の財宝がエジプトに集められました。ヨセフの死後、ヨセフのことを知らない王が立つと、ヨセフの同胞、エジプトに寄留しているヤコブの子ら(ユダヤ民族)は、四百年の間、エジプトの奴隷となって苦役を課されました。ヨセフによって財宝豊かになったファラオは、へブル人の奴隷によって、多くの建造物を造り、町々を建てて、エジプトは世界に名がとどろく、強大な国となったのでした。

 

 へブル人の奴隷(ユダヤ民族)は、苦しみうめきながら増え広がり、エジプト人の数よりも多くなりました。そして、父祖アブラハムに約束されたカナンの地をアブラハムの子孫(ユダヤ民族)に所有させるために、神はモーセを立てて、ユダヤ民族(イスラエル)を奴隷の家エジプトから救い出し、連れ上りました。

 エジプトから出て行った奴隷を連れ戻そうとイスラエルのあとを追いかけたエジプトの王と全軍勢は、イスラエルに続いて、水の分かれた紅海の乾いた地を通ってイスラエルに迫りました。

 しかし、神は、イスラエルが無事に渡ると、右と左に水の壁となっていた紅海の水をもとに戻して、エジプト人を海の真中に投げ込まれ、紅海はエジプト人を飲み込みました。イスラエルは海辺に死んでいるエジプト人を見たのでした。

 

 こうして栄華を極めた大国エジプトの力は砕かれました。エジプト人の数よりも多いへブル人の奴隷と、王や全軍勢、力ある者を失ったエジプトは、弱い国となったのでした。

 

 エジプトが強国となって栄えたのは、主がともにおられるユダヤ人のヨセフのおかげであり、また、それは、エジプト人の数よりも多くなるヤコブの子ら(ユダヤ民族)をエジプトの地で養うため、また、神との契約を持つアブラハムの子孫(ユダヤ民族)を大国エジプトの地で周囲の国々から守りつつ、カナンの地を所有する一つの国民に成長させるために、強国の中でのちのイスラエル王国の国民を育てる神の計らいだったのではないでしょうか。

 エジプト(この世)の繁栄も衰退もイスラエルのためのような気がします。エジプトは、イスラエルゆえに栄え、イスラエルへの暴虐ゆえに没落しました。

 

 さて、カナンに住んでいたヤコブの子らも飢饉により、穀物を買うためにエジプトのヨセフのもとに来ました。ヨセフは、兄弟だとわかりましたが、兄弟たちはエジプトの大臣が奴隷商人に売った弟のヨセフだと気づきません。

 

 ヨセフは、全世界に飢饉を計画しておられた主が、兄弟たちの妬みを利用して先にヨセフをエジプトに送り、ヨセフによって、父ヤコブの家が飢饉の間も養われ、生きながらえるためであったことを悟りました。ヨセフは、ヤコブの家の長子なのです。

 

 ヨセフは、兄弟たちに、自分はあなたがたが奴隷商人に売った弟のヨセフであることを明かしました。兄弟たちは、自分たちが弟ヨセフにしたことで、ヨセフを目の前にして驚きのあまり、答えることができませんでした。

 

 夢見る者と言って、ヨセフを憎んだ兄弟たちは、「あれの夢がどうなるかを見てみようではないか。」と言っていました。今ここに、兄弟たちは、エジプトの大臣ヨセフのもとにひれ伏し、神の御顔を見るようにヨセフを見ているのです。

 

 ヨセフは、ひれ伏す兄弟たちを目の前にして、神は真実であり、神の導きは祝福であったと実感したことでしょう。

 ヨセフは、兄弟たちをエジプトの国をうかがうためにやって来た間者だと言って、苦しめました。エジプトの大臣が弟のヨセフであることに気づいていない彼らは、飢饉の中で養ってくれるヨセフが目の前にいるのに、穀物が得られないことを心配していました。また、ヨセフの母と同じ母から生まれた弟ベニヤミンを失うことを心配しました。

 

 兄弟たちは、目の前に起こることで心騒がせていました。しかし、ヨセフにはわかっていました。父ヤコブも弟ベニヤミンも、兄たちも、エジプトの豊かな地で養われること、そして、ヤコブの家はエジプトの地で安全に暮らすことを知っていたのです。

 

 このことは、まるで人が神の前に右往左往しているのに、あるいは、窮状に落胆しているのに、神は、彼らを喜びで満たす良い計画をもって楽しんでおられるようです。

 

 兄弟たちの目は塞がれています。ヨセフがわかりません。ヨセフがわかると、自分たちの悪事に心痛めます。しかし、ヨセフは兄弟たちを訴えたりしません。兄弟たちが心配するような事は何も起こらないのです。

 

 ヨセフには、父や兄弟のために良い計画があったのです。彼らを祝福したいのです。ヨセフは兄弟たちを見てすぐにわかりました。そして、彼らを養うための良い計らいを持っていたのです。

 

 人は、閉ざされた環境で希望を失い、心を騒がせます。しかし、神は、心を揺さぶられる彼らをご覧になりながら、祝福を用意しておられて、それを彼らに与えたときに彼らが主にひれ伏して主を讃え、感謝し喜び笑うのをご覧になって喜ばれ、彼らを祝福することを楽しまれるのです。